【第9回ふくしま産業賞 特別賞】 松竹工芸社(西郷) 会津桐の壁紙を開発
国産桐(きり)を独自の技術で薄く切ったシート状の木材「突板(つきいた)」を油絵のカンバス全面に貼ったアートパネル「桐絵‐KIRIĒ」が事業所内に並ぶ。豊かな彩りの中に自然のぬくもりが感じられるデザインで、女性を中心に人気が高まっている。 1963(昭和38)年に横浜市で創業。雲母やコルクなど自然素材を用いた壁紙を製造していた。1967年に機密性の高い会津桐に着目し、西郷村に移転した。小針悦也社長(60)は四代目だ。 桐は高級たんすなどに使われるが、生活様式の変化など時代の流れとともに需要が減っているという。危機感を抱いた小針社長は桐の良材以外の部分を活用できないかと考え、年輪模様の突板を用いた壁紙を2019年に開発した。国産の桐は海外産と比べて染色後の光沢が強く燃えにくいことから、国内外の高級ホテルや有名ブランドブティックなどで採用された。 さらに販路拡大につなげようと品質をそのままに住宅にも使ってもらえるように工夫したのが「桐絵‐KIRIĒ」だ。桐材ブロックの内部に色を染み込ませる技術「斑(むら)染め」を開発。色の調整が可能になったことで彩り豊かな仕上がりを実現した。小針社長は「桐絵の輸出を進めるため商標の国際登録も目指す」と目標を掲げた。
■メモ ▽設 立=1963(昭和38)年6月 ▽社 長=小針悦也 ▽従業員数=5人 ▽住 所=西郷村米字米村64の1 ▽電話番号=0248(25)1200