JALと東科大「新搭乗方式」は何がどうスゴい?ANAとの違いを教授に聞いた
JALが採用した新搭乗方式とは?
一方、JALは搭乗時における機内混雑の緩和と定時性向上を目指し、国立東京科学大学(旧東京工業大学)の大佛 俊泰(おさらぎ としひろ)教授と共同で、新たな搭乗方式に関する研究を行った。この研究は、搭乗プロセスがフライト遅延に与える影響を分析し、改善の可能性を探るものである。 国内線のワイドボディ機においては、乗客数が多いため搭乗に時間がかかることが課題であった。そこで大佛氏の研究チームは、搭乗プロセスを効率化するためのデータ分析とシミュレーションを行った。 これまで同社はANAと同様に搭乗順をグループ分けしてきた。一方新搭乗方式では、座席番号に基づき区分された搭乗順序が採用され、乗客がスムーズに機内に入れるよう工夫されている。親子グループなどの事前改札・優先搭乗(グループ1-2)の後に、後方座席と前方窓側座席のお客さまをグループ3、それ以外の前方座席のお客さまはグループ4として搭乗する方式に変更された。これに伴い、ワイドボディ機材ではグループ5が廃止されている。この新方式は2024年9月11日より国内線で実施されている。 また、搭乗改札を通過後にボーディングブリッジを2本使用する場合、これまでは利用クラスに応じて搭乗ドアを案内していたが、今後は普通席のお客さまに対しては座席列ごとに案内を行うように変更となる。これにより、上級クラスと後方右舷の旅客はL1(左舷前方)ドアから搭乗することで、L2(左舷2番目)ドア付近での混雑が緩和されることにより、スムーズな搭乗ができるようになるという。 JALカスタマー・エクスペリエンス本部グローバルCX推進グループの布施 達矢氏は、「定時性の向上は、顧客のフライト体験に直結します。スムーズな搭乗プロセスにより、乗客はより快適に過ごすことができ、ストレスも軽減されます」と語る。
東京科学大学大佛氏に聞いた、JALとの共同研究の全貌
今回の研究に協力した東京科学大学 大佛氏に話を聞くことができた。大佛氏は、搭乗時における機内混雑の緩和と定時性向上のためには、技術的アプローチが重要であると強調する。 「搭乗行動に関する観測データに基づく分析とシミュレーションで、旅客搭乗プロセスの効率性を大きく高めることができます。今回の研究では、効率的な搭乗方式を観測データとシミュレーションから明らかにしました」(大佛氏) 大佛氏の専門は建築計画学であり、人間行動をシミュレーションで解き明かしている。世界で初めて商用運航する実機で実証実験を行った点が世界的に評価されている。過去には、米国の航空会社にてモックアップ(模擬客室)で実証実験を試みた例はあるが実機の事例はなかったためだ。 研究チームは、人の属性を性別、年齢、目的、グループ人数に区別し、手荷物種別と数、歩行時間、待ち時間、着席までの時間、干渉される時間などに細分化してシミュレーションモデルに組み込み、最適な搭乗方式を導き出した。 7回にわたる観測調査において機内に設置した360度カメラで搭乗中のお客さまの動きを記録し、そのデータをもとに独自の搭乗シミュレーションモデルを作成した。このモデルを使って、12種類の搭乗方式それぞれについてシミュレーションを1000回試行。最適な搭乗方式を導き出したのだ。