キャストが語る『ライオン・キング:ムファサ』。「演じることの不安や緊張感がキャラクターに反映されている」
ディズニー最新作『ライオン・キング:ムファサ』が明日20日(金)から公開になる。本作が描くのは『ライオン・キング』に登場した偉大な王ムファサの若い頃の物語。劇中に登場するムファサも仲間たちもまだ若く、未熟で、不安定な状態だが、その“揺らぎ”が観客の心を打つドラマを生み出している。 【画像】その他の写真 ムファサを演じたアーロン・ピエール、その相棒タカを演じたケルビン・ハリソン・ジュニア、ふたりと行動を共にするサラビを演じたティファニー・ブーンも本作に挑む緊張感や、自身の中の不安定さを演技に盛り込んだようだ。彼らに話を聞いた。 アフリカの雄大な地を舞台に、ライオン“シンバ”の成長の物語を描いた『ライオン・キング』は誕生から30年を経ても愛され続けている。 明日から公開になる『…ムファサ』はその続編であり、シンバの父の若い頃のエピソードが明かされる感動作だ。両親とはなればなれになってしまった幼いムファサは、同年代のライオン、タカに命を救われ、彼と“兄弟の絆”で結ばれる。ふたりは共に成長するが、ある日、凶悪なライオン、キロスが出現し、ふたりは群れを離れて追っ手から逃げながら、どこかにあるという“理想の地”を求めて旅に出る。 『ライオン・キング』では先ごろこの世を去った名優ジェームズ・アール・ジョーンズがムファサを演じたが、本作では1994年生まれの英俳優アーロン・ピエールが抜擢された。 「俳優として本作に出演し、演じることの不安や緊張感が、ムファサというキャラクターに反映されていると思います。思春期というのは、まだすべてのことが理解できないですし、この先がどうなるかわからないものですよね? 僕がこの作品に出演すること、そこで覚えた不安や緊張がまさに“思春期のムファサ”を演じる上で役立ったんです」 ムファサとタカが道中で出会い、仲間になるサラビ役のティファニー・ブーンも「私もアーロンと似ています」と笑みを見せる。 「本作で演じることに対して緊張していましたから、サラビの“ぎこちなさ”を表現するのは難しくなかったです。サラビは緊張したり不安を感じると、キレやすくなるし、自己弁護的になるんですが、私も同じようになることがあります(笑)。きっとサラビも不安になっているのを周囲に見られたくないので、嘘の自信を見せて、ごまかそうとしているんですよね」 若い時は誰もが不安で、しかしそれを周囲に打ち明けるほど強くも潔くもない。だからこそ本心を隠したり、聞けばすぐに済むことでも勝手に想像して勝手に混乱したりもする。本作でそんな“自分に振り回される若者”像を最も体現しているのはタカだ。彼は王の息子として生まれ、いずれ自分がその座を継ぐことが決まっている。しかし彼は自信がなく、経験もなく、タカには申し訳ないがその器量も度胸もない。 「タカはリーダーとはどういう存在かを探っているんだと思います」と、タカを演じたケルビン・ハリソン・ジュニアは分析する。 「そこで彼は支配者とは“周囲から注目される者”だと思ってしまうんです。でもそれは若者にとって難しいことですし、注目を集めることが目的というのは……どこか“空虚”ですよね。通常であれば、タカは自分を信頼して、成長の過程で自分に合ったものが出現するのを信じて待てばよいのですが、彼は完璧な自分、完璧な世界を想定して、失敗した自分、まだ夢に到達していない自分を過剰に“埋め合わせ”しようとするんです。ですからタカが想像する“完璧な世界”をまず思い描いてから、それを成し遂げようとする姿を演じるようにしました」 本作は、王の想い、その哲学が世代を超えて継承されるドラマや、アクション満載のアトラクション的な要素、感涙必至の家族の物語も描かれるが、中盤の若いライオンたち(ムファサ、タカ、サラビ)の旅は王道の“青春群像劇”を思わせる。 「(本作を監督した)バリー・ジェンキンスはこの作品を描く上で最もピッタリの監督なんです」とアーロン・ピエールは力説する。「彼は繊細で、きわどい題材や感情を明確で雄弁で極めて美しい表現で描くことができる才能があります。本作では『ライオン・キング』から引き継いだ重要な題材や繊細な感情が登場しますが、バリーはそれを美しさ、雄大さを維持しながら語ることができる人なんです。彼と一緒に仕事することができて、本当に興奮しています」 若いがゆえに不安定、先が見えないから感情も過剰。そんなギリギリな若者たちの姿も本作の大きな見どころだ。その果てに訪れるムファサとタカの“切ないドラマ”は多くの観客を魅了することになるだろう。 映画『ライオン・キング:ムファサ』 12月20日(金) 公開 (C)2024 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.