80代でファッションアイコンに。独自のスタイルで“何者か”を表現し続けた【アイリス・アプフェル】
80代にしてファッションアイコンとしてデビュー
“アメリカ最高齢のファッションアイコン”としてアイリス・アプフェルが知られるようになったのは、2005年にNYのメトロポリタン美術館付属の服飾研究所(コスチュームインスティテュート)で開催された展覧会、「Rara Avis: Selection from the Iris Apfel Collection」がきっかけだ。彼女が長年にわたり収集してきたコスチュームジュエリーと洋服を紹介するこの展覧会は、膨大なコレクション点数と彼女の卓越した審美眼、独自のセンスが光るスタイリングが絶賛され、メトロポリタン美術館のみならず、フロリダのノートン美術館、NYのナッソー郡美術館、マサチューセッツのピーボディ・エセックス博物館などでも開催されるほど話題に。 【写真】おしどり夫婦として知られたアイリスと生涯の夫 それまでファッション業界でほぼ無名だった彼女の名は、国内はもとより世界中に知れわたることとなり、その人気を裏付けるように、2014年にはドキュメンタリー映画『Iris(邦題:アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー)』も公開されている。 “80代の新人”――当時そんな愛称を得たアイリスは、瞬く間にファッション業界の中心的存在となり、ドリス・ヴァン・ノッテン(65)や元J.Crewのジェナ・ライオンズ(55)といったデザイナーたちにも大きな影響を及ぼす存在となったのだ。
ファッション業界から注目される以前は、インテリアデザイナーとして活躍
NY生まれのアイリスは、ブティックを営んでいた母親の影響で幼少期からファッションに高い関心をもっていた。大学ではアートを専攻し、卒業後はファッション業界紙『Women's Wear Daily』に雑用係として就職。その後、イラストレーターのロバート・グッドマンのアシスタントとして働き、インテリアデザイナーに転身する。ファッションではなくインテリアの世界に身を置くようになると、1950年代前半には最愛の夫であるカール・アプフェル(享年100)と「オールド・ワールド・ウィーヴァーズ」社を設立。テキスタイルやインテリアのデザイナーとして、その才能を開花させていく。 持ち前のセンスを活かして、数々のセレブリティを顧客に持ち、ホワイトハウスや美術館の装飾の復元も担当するなど、華々しいキャリアを築いていったアイリス。しかし映画『Iris』の中で彼女は、「織物業界に入るつもりは全くなかった」「私はいつも流れに身を任せてきただけ」と、自身のキャリアについて飄々と語っている。与えられた出会いの中で、自分が輝ける場所を見つけ出し、それをモノにする。そんな天性の嗅覚こそが、彼女を成功へと導いていたのだろう。