女性同士のマウンティングは社会が作っている? 心穏やかに過ごすコツとは
友達や同僚との関係の中で、小さなストレスを受ける「マウンティング」問題。論文『マウンティングエピソードの収集とその分類』が話題となった、臨床心理学者の森裕子さんとともに「マウンティング」について考えていきます。今回は、心穏やかに過ごすコツについてお話を聞きました。 【画像】女性同士のマウンティング
マウンティングは「社会から作られてしまった女性の価値」によって複雑化している?
――マウンティングの3大カテゴリー<伝統的な女性としての地位・能力><人間としての地位・能力><女性としての性的魅力>。これらは、どれも社会や周囲の目など様々な「外側からの力」によって作り出されたものではないか、という疑問も持ちました。 「女性は結婚して子どもを産むのがスタンダードだ」とか、「いや、女性も働き出世し社会で活躍しなければならない」とか、方向は違うけれど、評価軸が「外から見た自分」になっているのではないかと。とすれば、マウンティングは社会構造と切っても切れない関係なのかなとも思えてきます。 森さん:私は臨床心理学の観点から研究を進めているので、社会学的なことについてはあまり詳しくありませんが…。例えば「美しさ」のマウンティングは、世の中で「これが美しいよね」という世の中の共通認識によって起きているものだと考えると、確かに社会とは切っても切り離せないものであるとも感じています。 論文の感想で「社会構造による影響があるのだとしたら、女性だけの問題と捉えず、もっと大きな視点からアプローチしていくことも大切だ」というようなご意見もたくさんいただきました。私も、三すくみには社会での関係性や構造によって影響を受けている部分があると感じています。 例えば、私は研究を始める少し前までは「メイクがうまいね」みたいなことにモヤモヤを感じていました。ですが、27歳になった今では「結婚・妊娠・出産」や「仕事・キャリア」などに対するマウンティングについてよく考えるようになりました。30歳前後ではこのあたりでマウンティングが起きやすい傾向があると考えています。 20代のころの「メイクがうまいね」については使うアイテムを変えたりすれば自分だけで動かすことができる問題ですが、「結婚・妊娠・出産」や「仕事・キャリア」については、自分だけではどうにもならないものです。 つまり、対処や回避が自分だけではできない「マウンティング」が起きている。そう考えると、相手や周囲、または社会の変化が必要なところもあると思います。個人ではどうしようもないことなのに、マウンティングにより傷ついてしまう方がいることは、臨床心理学の観点から見ても問題だと感じます。