紀平が挑む4回転と羽生の4回転アクセル。どうなる来季のフィギュア界?!
国別対抗戦を最後に2018-2019年のフィギュアスケートのシーズンが終了。それぞれの選手は2019-2020年シーズンの開幕に向けての充電、準備をスタートすることになる。今季の傾向から見える来季の男女フィギュア界の展望はどうなるのだろうか。 今季の女子フィギュア界に衝撃を与えたのが、シニアデビューした高校1年生の紀平梨花(16、関大KFSC)だった。GPシリーズで連勝、トリプルアクセルを武器にGPファイナルで初出場初優勝の快挙を達成した。四大陸選手権もV、弾みをつけて挑んだはずの世界選手権ではミスが生まれ表彰台を逃したが、そのインパクトは、バンクーバー五輪銀メダリスト、浅田真央の登場シーンを彷彿とさせるものだった。 紀平のトリプルアクセルに続くもうひとつの衝撃が4回転革命である。ロシアのアンナ・シェルバコワ(15)、アレクサンドラ・トゥルソワ(14)のジュニア世代コンビが成功させ、ロシア選手権では、シェルバコワが4回転ルッツ、トゥルソワは2種類の4回転をプログラムに入れてきて、平昌五輪金メダリストのアリーナ・ザギトワ(16)をも蹴散らしワンツーフィニッシュ。トゥルソワは世界ジュニアでは、なんと4回転を3本入れる構成にトライ。冒頭の4回転ルッツは転倒したが、4回転トゥループ+3回転トゥループのコンビネーションに成功、単独の4回転トゥループも着氷し優勝を飾っている。また世界選手権では、ザギトワらを教えているエテリ・トゥトベリーゼ・コーチの指導を受けているカザフスタンのエリザベート・トゥルシンバエワ(19)が、女子として史上初の4回転サルコーを成功させ、銀メダルを獲得するというサプライズがあり日本勢は誰も表彰台に上がることができなかった。 不振に苦しんだザギトワ、活動拠点をロシアからカナダに変え羽生らが師事するオーサーコーチに専属コーチを変えたエフゲニア・メドベージェワ(19)の2人が、シーズン最後の世界選手権で復活を遂げたことも印象的だった。 元全日本2位で、現在福岡で後進を指導している中庭健介氏は、今季の女子を総括した上で、来季展望をこう読む。 「紀平さんが巻き起こした旋風に象徴されるように飛び道具、トリプルアクセルや4回転を持っている選手が有利でした。つまり女子の場合、高い技術点が勝つために必須要素だということなんです。女子は男子と違い、プログラムコンポーネンツの得点係数が、ショートで0.8倍、フリーで1.6倍のため差がつきにくい。若手選手のコンポーネンツの評価が上がってきて、実績のある上位陣との差がなくなってきました。技術が進歩する周期が想像以上に早まっているような気がします。そうなると高い技術点のあるエレメンツでポンと勝負がつくことになります。来シーズンは、ロシアの4回転を武器にするジュニア勢がシニアデビューしてきます。間違いなく4回転時代が到来するでしょう。紀平さんがすでに4回転の練習をスタートしているとも聞きます。宮原さん、坂本さんはトリプルアクセルへの挑戦を宣言しています。そこにいかないと勝てないという実感をすでに選手たちが感じている証拠でしょう」