「峠の釜めし」の売り子は、なぜ最敬礼でお出迎え、お見送りをしていたのか?
●この60年あまりで、変わった点は?
―昭和33(1958)年の発売時と変わっている点は何ですか? 髙見澤:発売した当初は内容表示がない時代でしたので、そのときの旬の食材を使っていました。残っている写真を見ると、いろいろなバージョンがあります。でも、文芸春秋に取り上げられてからは、食材の安定的な確保が難しくなり、いまの形に落ち着きました。また、草創期は錦糸玉子を使っていましたが、横浜高島屋の駅弁大会出品を機に(衛生上の観点から)うずらの玉子に、絹さやがグリンピース、チェリーがあんずに変わっています。 ―期間限定モノも多いですが、掛け紙はどのようにデザインしていますか? 髙見澤:釜めしの掛け紙のベースは昔と変わっていません。昔は印刷会社にデザインを発注して、そのなかから選んでいましたが、いまは期間限定ものを中心に、ほぼ自社でデザインして作っています。最近は、期間限定の「掛け紙」を目的にお求めになる方も多いですね。釜のカラーも10種類以上あります。最初は横川にやって来るSLをモチーフとした黒の釜から始まりました。『鬼滅の刃』とコラボした際、一気に5色、釜が増えました。
●増える釜めしのバリエーション!
―最近は釜めしの“姉妹品”が増えているように感じていますが? 髙見澤:いまは「峠の親子めし(鮭とすじこ)」、「峠の牛めし」、そして、冬季限定の「峠のかきめし」の3つを出しています。他にも季節に合わせて鶏、うなぎ、松茸などの釜めしを出しています。とくに松茸は、かつて販売していた「峠の松茸めし」を釜めしにしたものです。松茸は100%長野県産のものを使っていますので、本当にその年の価格に左右されます。私たちも価格設定は悩みますね。 ―姉妹品を増やしている理由は? 髙見澤:「峠の釜めし」はもともと、四季の旬の食材を使って作られた駅弁です。10年ほど前に、春夏秋冬の季節限定の釜めしを販売していましたが、コロナ禍で販売を中止しました。季節限定の釜めしの代わりにさまざまな姉妹品を開発し販売を行っています。それまで弊社には「釜めしは1種類だけ」という暗黙の了解がありました。私はそういう(根拠のないルール)が大嫌いなんです。