<インド>スカベンジャーの女性たち ── 高橋邦典フォト・ジャーナル
インド最大の炭鉱の町、東部ジャルカンド州にあるダンバッド。 町に近づくにつれて、どんよりと霞んだ空気に気づかされる。炭鉱から舞い上がる粉塵と、燃やされる石炭の煙のためだ。鉱山のひとつを訪れると、大勢の女たちが籠一杯の石炭の塊を頭に乗せて、丘を上り下りしていた。「スカベンジャー(ゴミあさり)」とよばれる彼女らは、ここではゴミではなく、石炭を拾い集め、仲買人に売って幾ばくかの収入を得るのだ。違法行為ではあるが、警察も彼女らの苦しい生活を知っているからか、ほぼ公然とおこなわれている。優に20キロは超えるであろう石炭を頭に積んでののぼり下りは、かなりの重労働だ。これを何時間も続けてやって、稼ぐのはせいぜい数百円ほど。
「これしか仕事がないからね」 一人が言った。しかしなぜ女性ばかりなのだろう? 時々当局の手入れがはいることもあるようで、そんなとき捕まっても女はすぐに釈放されるが、男には罰金が高く課せられたり、拘束されてしまうからだと、そんな答えが返ってきた。 (2014年12月) ---------------- 高橋邦典 フォトジャーナリスト 宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。 Copyright (C) Kuni Takahashi. All Rights Reserved.