ブドウの味わい引き出す 弟子屈ワイナリー仕込み作業続く
北海道釧路、根室管内初のワイナリー「弟子屈ワイナリー」を運営するセナヴィーノ(高木浩史代表取締役社長)では、今秋収穫のブドウの仕込み作業が先月から続いている。今年6月に開設し、初めての自社醸造。「ブドウの味わいを最大限引き出すため、気が張る時期」(高木社長)と連日、発酵が進むブドウと向き合っている。 収穫作業は10月9~28日まで、道内外の同社ワインのファンらボランティアも参加し、ヤマブドウ系の品種約4500㌔を収穫した。高木社長は「今年は春から夏ごろまで天候が不安定だったが、秋の天候が暖かく安定し、成熟した良いブドウを収穫できた」と話す。 収穫後のブドウは、ステンレス製タンクでアルコール発酵を促す。タンク上部にたまったブドウの果皮や種などを崩し、液体と攪拌(かくはん)するピジャージュ(櫂(かい)入れ)は、色味やタンニン、香りの成分を抽出する赤ワイン製造には大切な工程。アルコール発酵の効率を上げたりワインの清澄度にも影響する。日々の天候や気温、施設内の温度や湿度、タンク内の状況に応じ、温泉水も活用して発酵の進み具合をコントロールする。発酵が進むと、もろみ状の皮と種を圧搾。後発酵を経て落ち着くと、木樽に移し熟成させる。 高木社長は自社産ブドウについて「野生酵母の力強さが魅力。仕込みは1年に1度きり。五感を使って日々変化する気付きを大切に、どこまで人の手を入れるか見極めている」と語る。 同社のブドウは完全無農薬。これまでは他のワイナリーでの委託醸造だったが、今年6月に待望の酒造免許を取得した。8月には開設を記念しブドウ品種「山幸」を使った「和(なぎ)」、同「清舞」を使った「琴」を発売。釧路市内のワインバーやレストランをはじめ道内外のワイン専門店やホテルなどで高評価を得て、取り扱いが増えている。今秋収穫したブドウで作るワインは来春から順次、出荷が始まる。