自民候補“高市推し”で選挙運動 石破総理のポスターはゼロでも勝利 野党は三つ巴で票固まらず 東京12区【衆院選2024】
■安倍派・保守系議員、高市早苗氏が“火炎瓶事件”の日に応援入り 10月19日。 自民党本部に男が火炎瓶を投げ込み、総理官邸に車で突っ込もうとした事件が起きたその日の正午、高市早苗・前経済安保担当大臣の姿は東京北区・赤羽駅にあった。 厳重な警備の中、衆院選東京12区の自民党候補・高木啓氏の応援に駆けつけたのだった。 300人を超える聴衆に対し、高木氏の外務政務官の経歴を引き合いに外交・安全保障の重要性や、同じ積極財政派として経済成長などを訴えた。 安倍派に所属していた高木氏は、高市氏が顧問を務める自民党・保守系議員のグループ「保守団結の会」に参加し、9月に行われた総裁選でも高市氏の選対に入っていた。 選挙事務所の外観には、高市氏の顔写真やキャッチフレーズを大きく掲示し、石破総理のポスターは1枚もなかった。 ある選対関係者は「石破さんの批判をしているわけではない。ただ“高市推し”の潔さで戦う。総裁選の党員票も東京では高市さんが1位だったし、保守票を固めたい」と話す。 高市氏との距離の近さを前面に出す選挙戦スタイルに、他候補の陣営は「違和感しか感じない。衆院選の後に、自民党内で抗争でもするのかと思う」と揶揄した。 27日に行われた投開票の結果は、高木氏の当選。 初の小選挙区での出馬のうえ、“裏金”はなかったものの安倍派に所属し、逆風と言われていた中での勝利だった。 ■主戦場「北区」で自民が仲間割れも、公明党の“団体票”固め勝利へ 区割り変更に伴い、東京12区は北区全体と板橋区の一部を含む。主戦場は北区となった。 高木氏は北区出身で、北区議と北区選出の都議を30年近く務めた経歴を持つ。圧倒的な地盤を持つものと思われていたが、北区特有の事情が懸念された。 今年4月末、北区議会の自民会派が分裂。他候補の陣営はこの状況を「自民党の区議たちは、一枚岩になって高木さんを応援できないだろう」と好機と捉えていた。 しかし冒頭に挙げた高市氏による応援演説には、コロナ療養中だった大沢議長を除き、自民党区議の全員が参加。 高木氏の陣営幹部は「それぞれ色々と思うところはあるかもしれないけれど、結局みんな選対に入って一致団結している」と自信を見せた。