今秋ドラフト候補の横浜隼人・沼井伶穏投手

　プロ野球ドラフト会議が24日に行われる。プロ志望届を提出した選手、ドラフト指名を待つ選手。吉報を待つグラウンドに、日刊スポーツの記者が思いを尋ねに向かった。 【写真】沼井伶穏のプロフィル 　　◇　　　◇　　　 　横浜隼人（神奈川）の沼井伶穏投手（3年）のもとには10月上旬の時点で、NPB全12球団からの調査書が届いている。 　「プロ志望届を出したら調査書とかが届くかもという話は聞いていたんですけども、まさか12球団からいただけるとは自分の中でも全く考えていなくて。本当にありがたいことで」 　まだまだ細身ながら、投げ込む直球はこの夏、151キロをマークした。その将来性を多くのスカウトが評価し、面談も重ねた。 　「今まで自分はそんなにコントロールを自信持っていなかったんですけれど、そこを評価してくださる球団もあったり、マウンドでの立ち振る舞いをほめてくださった球団もあったので。いろいろなところを見ていただいたんだなと、うれしくなりました」 　甲子園出場はならなかったものの“夏休み”はなかった。「ずっと練習してきました」と振り返る。海も花火もない。「あまり興味ないというか、自分はこの先プロ野球選手を目指していて、今やらなきゃいけないことを優先したいなと思っていました」。そんな8月でさらに力を蓄えた。 　でも孤独じゃない。父はナイジェリア出身。子どもながらに感じる部分もあったというが、孤立することはなかった。 　「こういう言い方をするのがいいか分からないんですが、本当に周りに恵まれました。みんなもいつも普通で。昔も今も、本当に周りに感謝しないといけないと思っています」 　初対面の1対1は今でもそんなに得意ではないというが、いつも仲間たちがいたから、どこにいても自然と輪に溶け込んでいった。彼らの代表としてまず、プロ野球界を志す。 　12球団から調査書が来ても不安はゼロじゃない。 　「多少、不安はありますね。他の高校生投手を見ていても、どんどんレベルが高くなっているので。自分が他の高校生より劣っているとは思わないですけど、甲子園とかを見ていると、自分はそこには届かなかったので」 　将来の夢はアフリカの難民の子どもたちにきれいな水を届けてあげること。心優しいドラフト候補右腕は「5年後にはチームのエースと呼ばれるような投手になりたいですし、そのためにもまずはどこかの球団とご縁があれば」と願う。 　取材を終え、部屋の外に出る。記者の靴だけがある。沼井のスパイクはもう1段下の、見えないところにそろえてあった。「通るのに邪魔になっちゃうと思ったので」。12球団から注目される高校生は、そんな気づかい豊かな若者でもある。【金子真仁】