父と息子で始めたカフェ 納屋を改装した「ルートコーヒー」/福岡県福津市
福岡県福津市の山の麓、農家の納屋として使われていた建物が9月、おしゃれなカフェに様変わりした。店の名は「ルートコーヒー」。飲食店で経験を積んだ脇野修大さん(27)と、父親の栄一さん(56)が二人三脚で切り盛りする。 【写真】山の麓にできたカフェ
隠れ家的なスポット
住民と許斐(このみ)山の登山者くらいしか通らないような道沿いにカフェはある。周囲には田畑が広がり、店を目的地に定めていなければ、気づかずに素通りしてしまいそうだ。 地域のお年寄りが集うほか、大人の隠れ家的なスポットとしてSNSや口コミでじわじわと人気が広がり、福岡市や北九州市などから若い女性客らが訪れる。
なぜこの場所で、それも納屋を改修してカフェを始めたのだろうか? カフェの専門学校を経て、福岡市内のカフェやイタリアンレストランで経験を積んだ修大さん。栄一さんに「いずれは自分の店を開きたい」と話してみると、「だったら、ウチでやってみたら。納屋が空いていることだし」と提案されたそうだ。 そう言われ、築70年ほどの建物を見てみると、高い天井に広々とした空間、風雨に耐えてきた板壁が魅力的に映った。「一緒にやってみるか」――。どちらからともなく話が出て、トントン拍子に計画が進んだという。
戦後すぐに建てられた納屋では、農作業を手伝ってくれる牛が飼われ、2階にはワラが積まれていた。牛がいなくなったあとは、倉庫代わりとして、食器やテーブル、米びつなど、使わなくなったものが山積みになっていた。 カフェに改装するのにあたって、太い梁(はり)などはそのまま生かし、天井まで見上げることができる吹き抜けの構造にした。 2階の一部は栄一さんの希望で、ハンモックやソファ、オモチャの車などを配置した"秘密基地”に。この遊び心ある空間には、はしごを使って上ることもできる。
バランスのいい関係
夫婦で始めたカフェはいくつか見てきたが、親子で、それも20代の息子と父親のコンビは珍しい。 狭い空間で、男同士がずっと一緒にいるのは気詰まりなのでは? ちょっと遠慮しながら聞いてみる。 すると、「ウチはけんかも少なく、家族の仲が良いと以前から思っていました」と修大さんの言葉が返ってきた。小さい頃は怒られることもあったが、成長するにつれて友だち同士のようになり、その関係が続いているという。