訪日外国人客向け「二重価格」は差別?オーバーツーリズムで高まる導入機運、割引で地元民優遇も
大都市圏でも地方の観光地でも外国人観光客の姿を見ない日はなくなってきました。円安の恩恵を受けた“裕福な訪日客”は増え続ける一方です。この急増で、住民の受忍限度を超えた負担が生じたり、これまでの商習慣が変わったりという影響が出ています。外国人と日本人で価格に差を付ける「二重価格」もその1つです。いま大きな議論を呼んでいる二重価格とは? やさしく解説します。 【写真】「富士山ローソン」のオーバーツーリズ騒動は大注目を浴びた (フロントラインプレス) ■ 広がる「観光公害」 日本政府観光局が発表した資料(速報値)によると、2024年10月の訪日外国人観光客は単月で331万2000人に達しました。前年同月比では31.6%増、コロナ禍前の2019年同月比では32.7%増。9カ月連続で同月の過去最高を記録しました。331万人という1カ月の客数は、横浜市の人口約377万人に迫るレベル。都道府県別でも、約363万人を擁する全国10位の静岡県に匹敵しそうな数字です。 この結果、訪日観光客は2024年1~10月の累計では約3019万人となり、1964年の統計開始以来、最速で3000万人超えを達成しました。この勢いが続くと、2024年の年間訪日観光客数は3500万人前後に達します。実に日本の総人口の4分の1程度という規模です。国別では、中国や韓国、台湾、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インドなどからの訪日客が目立っています。 こうしたなか、観光地や都市にキャパシティ以上の観光客が押し寄せる「オーバーツーリズム」が問題になってきました。 オーバーツーリズムは日本語で「観光公害」とも訳されます。キャパシティ以上の観光客が一定の地域に押し寄せることで、駅や電車など公共交通、街なかの人混み、トイレなどで過度の過密状態が起きたり、ルールが乱れたり、あるいは、騒音やゴミの問題、環境破壊などを引き起こし、住民とのあつれきを生むことを指します。 “公害”の内容はさまざま。外国人を快く迎え入れようと思っていても、客数が想定以上に膨らむと、受け入れ側の心情が逆なでされることも少なくないでしょう。 “公害”とまでは言えないかもしれませんが、「二重価格」問題も地域社会にさまざまな波紋を投げかけています。食事やサービス、宿泊費などを対象に、外国人向けに高い価格・料金を設定する、逆に地元住民向けに安い価格・料金を設定する。これが二重価格です。