豊島は経常益116億円、2期連続で過去最高を更新 24年6月期
ーー足元を含めた景況感は?
豊島:前年(24年6月期)に続き、全体的な衣料品市況は悪くない。引き続き主力販売先との取り組みの深耕のほか、雑貨や食品、家電などの繊維製品以外の取り扱いを強化する。
ーーだが、25年6月期は売上高2000億円、経常利益90億円と減収減益の計画だ。
豊島:当社は非上場で、上場企業のように常に右肩上がりで増益を掲げる必要がないし、そのつもりもない。一方で24年6月期で達成した経常利益100億円という数字にはこだわりたい気持ちはある。ただ、高い数字を設定して現場に無理を強いるより、今は中長期的な種まきをする方が重要だ。
ーー種まきとは?
豊島:従来の延長線にはない、新規分野や新規商材の開拓だ。この数年、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)などを通じて、国内外のスタートアップとの連携を進めてきた。従来の取引先や繊維・アパレル業界にはない新しい企業、新しい分野、異なる業界の空気を、肌で感じる会社にしたいという思いがあった。当社は営業力が強い分、どこかなんとかなってしまう部分があった。そうではなく将来から逆算して、新しい商材やビジネスを生み出す取り組みがほしいと、現場には発破をかけている。
素材部門を例に取れば、新素材の開発には時間がかかる。例えばスパイバーへの出資はCVCではなく、本体から出しており、短期でリターンを求めるのではなく、長い目で見た取り組みだ。ただ、従来線上にはないからこそ新しく得られることも多く、そうしたことが会社全体を強くする。
ーーDXについては?
豊島:「費用はいくらかかってもいい」と号令をかけて取り組んできた。その考え方は変わらないが、期限と目標を決めて取り組むように伝えている。また、現場だけで話し合うのではなく、お互いの経営陣を巻き込んで会社対会社の取り組みにするよう指示している。
DXこそ、従来の延長線上にはない取り組みを視野にいれるべきだ。これまではOEM/ODMなどの「モノの取引」が中心だったが、DXにより、「サービスの提供」といった新しいビジネスをスタートしてもいい。今年は、経営幹部から現場の若いメンバーまで、新しいことに挑戦する年になる。