芸人としてどう生きるか。信じるのは自分の「主観」だけ:髙比良くるま
8月23日発売のForbesJAPAN10月号では、次世代を担う「30才未満の30人」を選出する「30 UNDER 30」を発表した。本記事では、30人の受賞者のなかから、ENTERTAINMENT部門に選出された漫才コンビ「令和ロマン」の髙比良くるまを紹介する。 FORBES JAPAN 30 UNDER 30 2024 「世界を変える30歳未満」30人 2023年にM-1グランプリで優勝した「令和ロマン」のボケ担当、髙比良くるま。「目標は立てず、主観で動く」という型破りな姿勢で、令和のエンタメを切り開く。 「やりづらかったですよ。お笑いの構造上、お客さんよりくだらないと笑ってもらえない。それなのに僕らはM-1優勝で高いところにのぼってしまったので」 インタビューの2日前の7月7日、『第45回 ABCお笑いグランプリ』に出場した令和ロマンの髙比良くるまは、僅差で優勝をもぎ取った激闘をこのように振り返った。令和ロマンはABCお笑いグランプリで2年連続準優勝に終わっており、今回は忘れ物を取りに行くようなものだった。一方、デビュー5年8カ月という史上最速でM-1王者になったにもかかわらず、今年も再参戦を明言。一度取った栄冠をなぜまた取りに行くのか。 「単純に出たいから出るんです。サッカーでいえば、リーグ戦もW杯もオリンピックも、出場権があるものは出続けたいし、毎回勝ちたい。キングカズ感覚です」 己の欲に忠実でいる一方、短期間でのし上がったからこその不安もある。 「まだ芸風が定まってなくて。昨年のM-1も1本目と2本目でタイプが大きく異なるネタだった。『これが自分たちの型』といえる名刺がないと、この世界ではいずれ消えていく。もっと実力をつけないとキツいという現実と、出たいから出るという僕の欲望。表と裏がマッチしたから今年も出ることに決めました」 ■あえて「主観」を信じて進む 漫才を究める求道者のような口ぶりのくるまだが、もともと漫才師を志していたわけではない。意識し始めたのは高校でラグビー部に入ってから。グラウンドで円陣を組んで声出しをするとき、ひときわ大きな声を出したら上級生が「声デケェよ。おまえすごいな」と笑ってくれた。 「恥ずかしがる感情が欠落してたんでしょうね。人前に出るのに向いていると自覚してからは、向いていることをやろうと思いました」