ロッテ・小野コーチ「みんなそれぞれ頑張ってくれた」…「ただもっと若手が出てこないと」今季の先発陣を振り返る
2年連続でAクラス入りを果たしたロッテ。先発陣は小島和哉、種市篤暉が規定投球回に到達し、小島と佐々木朗希が2桁勝利を挙げ、チーム先発防御率は『3.06』と昨季の『3.43』から良化した。 今季一軍で投手コーチを務めた小野晋吾コーチは「みんなそれぞれ頑張ってくれたと思いますし、みんな苦しむ時期もあったんですけど、立て直しながらシーズン通してやってくれたと思います」と先発陣を評価した。 ◆ 小島は4年連続規定投球回到達&2年連続2桁勝利 今季も先発陣を引っ張ったのが小島。開幕戦、交流戦開幕、交流戦明けのリーグ戦再開初戦と、大事なゲームのほとんどを任され、4年連続規定投球回に到達し、2年連続2桁勝利とマリーンズ先発陣で最も頼りになる存在だった。小野コーチは小島について「すごい苦しんだ時期があったんですけど、あれさえなければ素晴らしい数字だと思う」と今季も交流戦期間の6月に月間防御率10.80と苦しんだが、他の月は全て月別防御率を3点台に抑えた。 小野コーチは「苦しみながらもまだまだ最低限と言えば最低限なのかなと。彼の能力というか、力からしたらまだまだもっと上を目指してやれる数字を残せるんじゃないかなと思います。苦しんだ時期をしっかり乗り越えて、後半頑張ってくれたと思うので、評価できるところじゃないかなと思います」と口にした。 特にシーズン最終盤の9月は西武戦に3週連続登板もあったが、4試合・26回を投げ、3勝1敗、防御率1.38と安定していたこと。最下位・西武の対戦で絶対に勝ちが欲しい試合で、3試合全て7イニング以上を投げ、白星を手にした。9月29日の試合では、追い込んでからカットボールを多投するなど、いつもよりも気持ちフォーク、チェンジアップを決め球にするケースが少なかったように見えた印象だ。 小野コーチは「色々失敗もあったりして、しっかり自分で考えながら、考察しながら立て直して、繋げてくれたと思うので、大事な試合での投球に関しては良い内容の投球をしてくれたと思います」とその投球を絶賛した。 ◆ 種市は自身初の規定投球回到達 種市は2年連続二桁勝利とはならなかったが、自身初の規定投球回に到達。2月の練習試合から安定した投球を見せ、2月の練習試合、侍ジャパン、オープン戦、公式戦初登板となった3月30日の日本ハム戦まで21イニング連続で無失点に抑えた。4月6日のオリックス戦で5回・5失点で降板すると、4月21日の日本ハム戦、4月29日の楽天戦で2試合連続5失点と4月終了時点で防御率5.27と苦しんだが、千賀滉大からもらったグラブに変更した5月6日の西武戦から5月22日の西武戦にかけて3試合連続で自責点0。5月22日の西武戦では自身4年ぶりとなる完投勝利を挙げた。 今季の種市は3・4月(5.27)、7月(6.56)と苦しんだが、5月(0.90)、6月(1.88)、8月(1.50)とほぼ完璧に抑え込んだ。小野コーチは「色々苦しみながら、彼も苦しんで苦しんで、そこを乗り越えた」と振り返る。9月1日のソフトバンク戦で負傷し、右足内転筋の筋損傷で一軍登録を抹消されたが、同月30日の楽天戦に復帰し5回を無失点に抑え、自身初の規定投球回に到達し、日本ハムとのCSでも先発マウンドに上がった。 小野コーチは種市のシーズン終盤の離脱は「痛かったですけど、その後の2試合もしっかり自分のピッチングはやってくれたので、非常に良かったと思います」と話した。 種市は昨年の秋から中5日で先発したいと話していたが、1度も中5日での先発はなかった。種市が終盤に故障による離脱がなければ中5日で先発していた可能性はあったのだろうかーー。 小野コーチは「そういうのを含めてプランはあったんですけど、そうしなくても回せていけるというか、その他のピッチャーも頑張ってくれた。唐川にしても最後頑張ってくれましたし、スポットで投げた選手もそれなりの投球をしてくれたと思うので、先発に関しては頑張ってくれたと思います」と明かした。 ◆ 佐々木朗希は自身初の10勝 佐々木朗希は今季も離脱した期間がありながらも、チーム2位の10勝、防御率2.35。大事な最終盤、レギュラーシーズン3位を確定させた10月1日の楽天戦では9回を1人で投げ抜き完投勝利で自身初の10勝目。さらに日本ハムとのCSファーストステージ第1戦でも、8回を5安打無失点でチームを勝利に導いた。 今季はストレートの球速が160キロを超えることが少なく、スライダー主体の投球で“らしさ”が少なかった。それでも、シーズン最終盤の安定感は流石だった。小野コーチは「ストレートが思うように投げられなかったところではあったと思う中で、スライダーは進化していけていたので、フォーク、スライダー、ストレートをうまく組み合わせて終盤はうまく投げてくれた。最終登板は彼らしい投球ができていたんじゃないかなと思う」と分析した。 ◆ シーズン通して安定していた西野 小島、種市、佐々木朗希がシーズン途中に不調や故障離脱などがあった中で、シーズン通して安定した投球を見せていたのが西野勇士だ。 西野は交流戦前の取材から何度もストレートを課題にしていると話していたが、ストレートの状態が悪い中でもゲームを作り続け、7月は月間3試合3勝、防御率2.37。西野はゲームメイクできる理由について「勝負できる球が人よりちょっとだけ多いというだけで、それは助かっている要因ではあるのかなと思います」と自己分析。 「遅いですけど、今が今年いい状態かなと思います」と、ストレートの強さが戻ってきた9月は3試合全て6イニング以上投げ、1勝1敗、防御率2.70だった。今季取得した国内FA権を行使せず、来季から3年契約を結び残留が決まった。 ◆ 助っ人、若手、ベテラン メルセデスは勝ち星に恵まれなかったが、21試合・126回1/3を投げ、防御率2.71、シーズン途中に加入したカイケルは中5日と短い登板間隔で登板するなど、種市が故障で離脱した9月、非常に良い働きを見せた。石川歩、唐川侑己といったベテラン組、中森俊介、田中晴也といった若手組も登板間隔を空けながら好投した。 ただ、先発ローテーション入りが期待された中森は防御率こそ2.63だったが、先発では4試合・21イニングにとどまった。小野コーチは「期待していたというか、やってもらわなければいけない選手の一人だった。出力がなかなか上がらない時期があって、そこに苦しんではいたんですけど、彼なりに色々悩んで終盤、最後の登板なんかね、いいものを出してくれたと思うので、これが一つの経験、糧になって来年以降に繋がってくるんじゃないかなと思います」と来季に期待を寄せた。 また、2年目の田中晴はプロ初勝利を挙げ、CS争いが熾烈だった9月16日の西武戦では自己最速の155キロを計測するなど、5回無失点。小野コーチは「春からいいものは出してくれていた中で、もらったチャンスを活かしてくれたというか、いいものを出してくれたと思う。今年は色々一軍の登板を経験して、来年に必ず活きてくるというか、ローテーションピッチャーに加われるピッチャーになると思うので、そこは期待しています」と語った。 リーグ優勝するためにも若手先発陣には出てきて欲しいところ。小野コーチは「ベテランもそうですけど、もっと出てきて欲しい選手はいましたけどね。怪我に苦しんだ選手もいますし、CCも頑張ってくれましたし、カイケルもいいものを出してくれたので、先発に関してはやってくれたと思います。ただもっと若手が出てこないと。下の世代の突き上げが欲しいところだと思いますね」と自身の見解を述べた。 西野が国内FA権を行使せず残留を決めたが、佐々木朗希がポスティングシステムを利用してメジャー挑戦となり、“10勝・111回”という穴を埋めなければならない。小島、種市が“先発の軸”となってイニング数、勝ち星を稼いで、ベテラン、若手がそれに続いていく。来季、シーズンが終わった時に今季以上の強力な先発陣が作れていることに期待したい。 ▼ 先発陣の成績※成績は先発のみ 小島和哉 25試 12勝10敗 163回1/3 振132 四36 QS16 防3.58 種市篤暉 23試 7勝8敗 147回1/3 振148 四38 QS16 防3.05 メルセデス 21試 4勝8敗 126回1/3 振91 四34 QS13 防2.71 西野勇士 20試 9勝8敗 122回1/3 振77 四31 QS13 防3.24 佐々木朗希 18試 10勝5敗 111回 振129 四32 QS11 防2.35 カイケル 8試 2勝4敗 40回 振29 四15 QS3 防3.60 唐川侑己 6試 3勝1敗 33回 振28 四3 QS4 防2.45 石川 歩 5試 3勝1敗 24回1/3 振11 四6 QS1 防3.70 田中晴也 4試 1勝1敗 20回 振17 四6 QS0 防1.80 中森俊介 4試 1勝0敗 21回 振12 四6 QS0 防2.14 美馬 学 3試 0勝2敗 13回1/3 振8 四9 QS0 防7.43 高野脩汰 2試 0勝1敗 6回 振3 四4 QS0 防6.00 ダイクストラ 2試 1勝0敗 9回 振9 四5 QS0 防1.00 岩下大輝 1試 0勝0敗 1回 振1 四1 QS0 防0.00 横山陸人 1試 0勝0敗 2回 振3 四0 QS0 防0.00 取材・文=岩下雄太
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