農薬や化学肥料を使わない「和綿」をジーンズに: 兵庫・丹波篠山発
記事のポイント①サムライは農薬や化学肥料を使用しない綿の自家栽培に取り組む②有機の「和綿栽培」から「ジーンズ縫製」まで一気通貫の体制を整えた③耕作放棄地を利用したコットンファームで、地域の雇用創出も目指す
のどかな農村風景が広がる兵庫県丹波篠山市で、和綿の自給自足からジーンズの縫製まで一気通貫の体制づくりが進む。大阪・梅田に本店を構えるサムライ(野上徹社長)が運営する「サムライコットンファーム」だ。(オルタナ総研=坂本雛梨)
江戸時代には日本でも広く綿栽培を行っていた。ところが明治時代に外国綿糸の輸入が増加し、紡績業界が発展すると、国内の和綿産業は衰退した。現在、綿の国内自給率はほぼ0%になった。 ジーンズなどの衣料品の原材料である綿は、生産過程で大量の化学肥料と農薬を使用する。これは土壌・地下水の汚染や農家の健康被害にもつながる。 特に問題なのは、真っ白なコットンボールを包む「がく」の部分がコットンを汚すのを防ぐため、「がく」を枯葉剤で枯らす手法だ。綿の生産は手作業が多く、米国などのコットン畑では枯葉剤による健康被害のほか、インドなどでは児童労働や強制労働も深刻な課題だ。
こうした綿を巡る課題に疑問を持ったサムライは、「完全に自分たちの手でメイド・イン・ジャパンのジーンズを作りたい」と考え、2008年に「採れたて!一番デニム サムライ自家製ジーンズプロジェクト」をスタートした。 日本で綿を作るアパレル企業はほぼ無い中で、サムライは、農薬や化学肥料を使用しない綿栽培に取り組む。試行錯誤を重ねて、竹炭、竹チップ、鶏フン、綿の種を肥料に再利用し、土壌の質の改良を進める。 ファームは耕作放棄地を利用。国内では農家の高齢化や後継者不足で耕作放棄地の増加が課題だ。若者の田舎離れで空き家も多い。プロジェクトを通じて地域の雇用創出も目指す。
サムライコットンファームでできた綿は国内の熟練職人が紡績・染色・織布・縫製する。サムライは、ジーンズ、Tシャツ、スウェットなどに製品化して展開する。同社は丹波篠山市を「和綿の里」にすることを目指し、今後も妥協しないモノづくりを続ける。