名古屋生まれの中国人FWはなぜ3部リーグ挑戦を選択したのか 「チーム選びに成功した」と胸を張る訳【インタビュー】
目標は中国3部優勝&得点王
そして2月、ナツ選手の広東広州豹サッカークラブへの移籍が決定。広東広州豹クラブは、広州自動車工業集団など7つの国家企業が出資をする大型のクラブで、2024年シーズンは中国3部で首位、ナツ選手も6ゴールと得点ランキング2位につけています(5月25日時点)。新しいチームや生活にも慣れてきたということで、インタビューの時間をもらいました。 ――まず、なぜ広東広州豹クラブを移籍先に選びましたか。 「ありがたいことに、2部のチームからも複数オファーをもらいました。しかし、また同じ2部でプレーをして昇格を目指す、ということにチャレンジを感じませんでした。それは昨年十分にやり切ったつもりです。なので、違う環境で挑戦したいと思っていました。そんななか、このチームがオファーをくれました。自分でも調べてみると、スポンサー企業も充実しており、安定している。本気で2部リーグを目指すという目標がある。そして若手中心なので僕も経験から何か還元できること、プレーでチームを引っ張ることができそうだと、決断しました」 ――ナツ選手自身は2019年以来の3部でのプレーになりますが、当時との違いは感じますか。 「全く違います(笑)。2019年は中国サッカーがどういうものなのか何もかも知らなかったですが、今は余裕があります。コロナ禍での厳しさや、昨年は絶対に昇格するという重圧の中で戦ってきた経験などありますので、見えている景色が違います。それがいい結果につながっているかと思います」 ――現在得点ランキング2位、不動のスタメンと調子が良さそうです。 「毎試合メンタル的に余裕と自信を持って戦えています。そして、僕は2部優勝チームから移籍してきたFWということで、みんなの期待を感じていますし、監督も僕も信用してくれています。それが居心地が良く、プレーでも上手く表現できていると思います」 ――それでも、スーパーリーグで戦ってみたかったという思いはありますか。 「もちろんなくはないですが、一番はやはり試合に出ることです。それにまだスーパーリーグへの可能性は十分あると思っています。まずはここでの戦いに集中し、2部へ昇格すること。そして、得点王も狙えるポジションにいますので頑張りたいです。その先にまたスーパーリーグへの挑戦も見えてくると思います」 ――広州での生活はどうですか。 「成都より正直いいですね(笑)。僕も市内の中心に住んでおり、日本食レストランが数多くあります。また日系企業も多く日本人をたくさん見かけますし、チームのアカデミーにも日本人コーチがいたりと、日本人との交流は成都よりしやすい印象です。ぜひ日本人のみなさんに試合を観に来てほしいです」 ――非常に前向きで充実した印象を受けます。 「そうですね。同じく深セン新鹏是城から新チームへ移籍した元チームメイトとも時々連絡をとっていますが、僕のチーム選びは成功したと感じています。中国ではチーム選びに失敗してしまうと給与未払いや解散など、ピッチ外のことに巻き込まれてしまいサッカーに集中できません。それがないクラブを冷静に選べたことも、自分が少しはこの中国サッカー界で成長できたなと感じる部分です」 中国3部の首位を走るチームを牽引する30歳のナツ選手。中国サッカー界で揉まれた経験から、冷静に現状を受け止め適切なチームでプレーをし、充実したシーズンを過ごしています。このまま3部優勝、そして得点王を獲得し、当初のシンデレラストーリーを上書きする最高のシンデレラストーリーを描いていくことを期待しています。
久保田嶺 / Rei Kubota