「キリン 氷結®」は発売当時、めちゃくちゃ斬新なチューハイだった…その意外な理由
あのロングセラー商品はどのようにして生まれ、どのようにヒットをつづけてきたのか。その道のりをたどる「ロングセラー物語」。今回は、発売から23年となる、キリンビールの「キリン 氷結®」にスポットを当てる。現在のブランド担当者が商品の歴史と今を語る。 【写真】「日本のどこがダメなのか?」に対する中国ネット民の驚きの回答 〔撮影:西崎進也〕 ---------- 【語る人】加藤麻里子さん かとう・まりこ/'85年、東京都生まれ。米国の大学を卒業後、外資系食品メーカーを経て、'18年にキリンホールディングス入社。'22年より「キリン 氷結®」のブランドマネージャー。 ----------
これまでにないチューハイ
チューハイ市場参入は、業界では後発だったんです。そこで開発チームが掲げたのは、「お客さまが驚くようなチューハイを世に出していこう」でした。 当時、販売されていたチューハイは中高年向け、男性向けのイメージが強かった。開発チームには20代の女性もいて、当時の商品とは異なる価値があるものを作っていこうと考えたんですね。 癖がなくて飲みやすい。すっきりして手軽に楽しめる。スタイリッシュで買いたくなる。それをどう体現していくか、開発時のコンセプトワードが残されています。 「キリンが品質とおいしさにこだわって、氷結®果汁を使った、果汁本来のみずみずしい香味が生きた癖や雑味のない、すっきり飲みやすい現代的なチューハイ」。たくさんの思いが詰まっています。 こうして'01年に発売されたのが、「キリン 氷結®」でした。手間もコストもかかるけれど、熱をかける処理をしない「氷結®ストレート果汁」を当時使い、搾りたての果実のようなみずみずしさを表現する。 通常、果汁は果物から搾汁すると、熱をかけて水分を蒸発させ、運搬後に水分を加えてもとの容量に戻します。そのほうが輸送効率もいいのですが、熱をかけてしまうので、どうしても味や香りに影響が出てしまう。そこで、搾汁したら余分な熱をかけずに凍結し、運搬して解凍する氷結®ストレート果汁を使いました。 さらに、爽快な口あたりを実現するため、焼酎ではなくウォッカを使う。果汁を使うと通常は混濁するところ、一つ処理を加えて透明な液色にして見た目もクリアにする。まさに、それまでにないチューハイでした。 そしてもう一つ、革新的だったのが、ブルーシルバーを基調にした斬新なパッケージ。さらに、カシャッとプルタブを開けると、パキッと凹凸が浮き出るダイヤカット缶でした。 これも冷涼感やすっきり感につながり、さらに滑りにくくて持ちやすいという評価も得ました。 チューハイ市場に参入するにあたり、販売を担う営業担当には当初、懐疑的な思いもあったのだそうです。ところが社内の試飲会場で飲んだ瞬間、場の雰囲気が一変したと聞いています。 発売後約10日で100万ケースを超える大ヒットになりました。