浦井健治が語る、井上芳雄は「先輩であり、兄のような存在」ともにミュージカル界の未来を見据えて…
板の上に行ったときもニュートラルでいられる秘訣
――浦井さんご自身は、このミュージカル界をどういう方向に持っていきたいと思っていらっしゃいますか? 芳雄さんの代演で出演した『スジナシ』を観てくださった方はわかると思いますが、僕はそんなに言葉を持っている方ではないんです(笑)。それが多分、いいか悪いか僕のポジションなんだと思います。でも、演出家の方々が「浦井でやってみたい」と仰ってくださって、突拍子もないところを楽しんでくださっているのであれば、そこは、自分を信じていいのかもしれないと思っています。 ――そのお話を伺って、劇団☆新感線で演じられた“シャルル王子”を思い出しました(笑)。 ありがとうございます。「浦井、なんかいいじゃん」って思ってもらったときは、やはりプロデューサーや演者の先輩が自分をそう見せてくれているのは間違いないと思うので、すごくありがたいと思っています。その数珠繋ぎで、こういったポジションを任せていただけていますし、それを25年やってきているわけですから。 ――舞台を降りて素の自分に戻られたとき、役はうまく抜けるタイプですか? 声質や話し方、言葉選びなどがセリフに近しいものになるかもしれないですが、それをやり続けている自分が、実はニュートラルなんです。セリフをブツブツ言い続けているときもニュートラルということは、板の上でもニュートラルでいられるということなので、それが“緊張しない”ということに繋がっていくんです。ずっと地続きで、オンオフという状況に持っていける。 王という人物を王に見せるのは、周りがそう見ているから。オンオフも変わらずセリフを唱えていることで、一緒に演じている方々が、自然と僕を役柄として見てくれるんじゃないかと思います。 ――『天保十二年のシェイクスピア』の観劇を楽しみにしているCREA読者へメッセージをお願いできますか? ミュージカルや演劇、ライブというモノに皆さんが惹かれる理由を考えたら、コロナ禍を経験したのもひとつあるんじゃないかと思うんです。その場の空気を一緒に共有することは特別なこと、普通のことじゃないんだということに気が付けたからこそ、今のエンターテインメントがあるんじゃないかなって。 チケット代は決して安い訳ではないので、一回の公演の重みというものを常に考えていなくてはいけないと思いますし、その一回が繋がっていくことで数百年先にも繋がるんだと思うんです。シェイクスピアもそうやって今まで続いてきたと思いますから。 今回の座組として東京以外にも大阪、福岡、富山、愛知に行きますので、よかったらぜひ何回か観ていただき(笑)、今日はこの役、次回は別の役に注目、というふうに楽しんでもらえると嬉しいですね。そして、「明日も頑張ろう!」と思ってもらえるような、よりキラキラした輝きを獲得していただけるような演劇体験になればと思います。 浦井健治(うらい・けんじ) 1981年8月6日生まれ、東京都出身。2000年『仮面ライダークウガ』(EX)で俳優デビュー。2004年『エリザベート』ルドルフ皇太子役に抜擢。以降、幅広いジャンルの作品に出演。第22回読売演劇大賞最優秀男優賞、第67回芸術選奨文部科学大臣演劇部門新人賞など数々の演劇賞を受賞。舞台以外にも、23年3月には3rdアルバム「VARIOUS」をリリースし、東京・大阪にてソロコンサートを開催するなど多彩な活動を展開している。
前田美保