AI で農業を変革する、農業のスマート化がもたらす効果と未来
国内農業の労働力不足、高齢化を補うAIテクノロジー
日本国内では、農業従事者の減少が大きな課題となっている。農林水産省によると、2020年に個人経営で農業従事者は2015年に比べて約40万人減少し、65歳以上の人が約7割を占めるなど農業の人手不足と高齢化の深刻さが顕著になっている。 こうした状況を踏まえ、新規就農者を増やしていく必要があるが、これまで長年の知識の積み重ねで行ってきた栽培技術をすぐに身につけるのは難しい。この問題に対処するため、AIを使った栽培支援やロボットの利用によって、敷居を低くし、労働力の低減をはかろうとする事例がある。 クレバアグリ(東京・中央区)は、オランダの事例に倣い、温湿度、照度、水位、CO2センサーを各所に設け、収集した情報をAIにより解析することで、成長度合いの評価や生育シナリオを最適化している。さらに、蓄積されたデータを活用し、最適な作業スケジュール管理を行う。 ソフトバンクが提供する「e-kakashi(イーカカシ)」は、植物科学の知見を積んだAIが栽培の判断を支援するシステム。環境データや作業記録を分析し、栽培環境を最適化するための「電子栽培ごよみ」という具体的な対策方法を提案する。これにより、ベテランから若手への技術の継承が、データに基づいて容易となる。 AIロボットによる農業の自動化を目指す取り組みも加速している。野菜の自動収穫ロボット開発を手掛けるinaho(神奈川・鎌倉市)は、アスパラガスやキュウリなど複数の野菜を1台で収穫できるロボットを開発。作物の病害判定や土壌診断といった機能を拡張でき、搭載されているカメラによって撮影された野菜が収穫時期に適しているかをAIにより判断する。 スカイマティクス(東京・中央区)が提供する葉色解析クラウドサービス「いろは」は、AI搭載型のドローンを使用して上空から農場の様子を空撮。取得した画像データから葉色を解析するサービスである。同サービスでは、農場の画像分析から、病害虫や雑草の発生を含む生育状況を診断・記録することができる。 これにより、農場を見回る労働力を低減し、施肥や環境改善などの必要性をスムーズに判断する。また、蓄積されるデータによって、より正確な収量予測が可能となり、金融機関や出荷先との信頼関係構築にも寄与している。 このように可視化されたデータを農業従事者間で共有することにより、新規就農者の農業技術習得の支援にもつながる。また、AIによる分析で得られた栽培の最適化は、高品質な農産物の安定的な生産することを支援する。