小池知事「合意なき決定」森会長「ワンチームで」30分で終わった4者協議
●東京で五輪コース使ったマラソン大会案
この日の協議では、IOCのトーマス・バッハ会長からの新たな提案が紹介された。小池知事は、協議直前の1日早朝に届いたメールで、東京五輪・パラリンピックの終了後に、東京で使われる予定だったマラソンコースで「オリンピックセレブレーションマラソン」を行うことを提案されたと明かした。「これまでIOCには、都民に誠意を示す必要があるとリクエストしてきた。これにバッハ会長から真摯なメッセージを頂戴した」と前向きに受け止める姿勢を示した。 コーツ委員長は「バッハ会長は、都民がIOCの突然の決定にいかに驚き、落胆したかを認識している。都民には札幌への会場移転がアスリートの健康を守るためにせざるを得なかった決定だと理解してほしい、と考えている」と代弁した。 4者協議に出席したロス五輪の柔道金メダリストで、組織委副会長を務める日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長からは、開催場所の変更が決まったマラソンと競歩について「世界のアスリートのために、コースやスタート時間をできるだけ早く決めていただけるよう、アスリートの視点からお願いしたい」との注文もあった。 ラグビー協会名誉会長でもある森会長は、30日のIOC調整委員会での「ワンチームとして大会を成功させたい」との小池知事の発言を引き合いに出し、「もう一度みんなでワンチームを構成して五輪を迎えたい」と一体感を強調。コーツ委員長も協議の最後に「一つのチームとして一体感を持ってやらなければならない」と述べ、本番まで9か月を切った五輪について「自信を持ってワクワクして迎えられるだろう」と期待を口にした。 小池知事が移転を容認する方針に転じたことで、札幌開催が決定され、1時間の予定だった協議は30分ほどで終了した。
●法的に勝てる可能性は極めて少ない
協議の後、都庁に戻って定例会見を開いた小池知事は今回の判断に至った理由を説明した。4者協議を控え、都が法律の専門家に相談したところ、東京開催を主張しても法的に勝てる可能性は極めて少ないとの見解を示されたという。「裁判関係の費用もかさむし、会場決定までに時間がかかるとアスリートにも負担がかかるため、法的措置という道を選ぶのは懸命ではないと判断した」と淡々と話した。 (取材・文:具志堅浩二)