ミームコインと大企業フィリップモリスはなぜ和解できたのか──ニコチンパウチ「ZYN」とZynCoinの法的争い
訴えられる主体の不在
今回のトラブルは、有名人や消費者向け製品にちなんだミームコインが、正式な提携関係がないまま増加する中で起こる紛争の途端かもしれない。 また、ブランドやセレブが暗号資産プロジェクトにその名前を利用されることを阻止するためにできることは限られていることも示している。 「分散型コミュニティ内でコンプライアンスを現実的に実施するには、特有の問題がある。たとえ創設者がハードルを削除するためにウェブサイトを変更できたとしても、DAO(自律分散型組織)に固有の分散型の意思決定プロセスによって、複雑さは一段と増す」とフロリダ州を拠点とするデジタル資産弁護士(今回の訴訟には関わっていない)ジョン・モンタギュー(John Montague)氏は指摘した。 例えば、「トークン保有者は、オンチェーンでの詳細を変更する提案を拒否する可能性があり、法的要求の遵守を困難にする」とモンタギュー氏は続けた。 以前にも、現実世界の製品をオマージュした非公式なファンによる暗号資産を中止さようとする試みはあった。任天堂の弁護士は、前回の暗号資産強気相場の絶頂期に、同社の有名なキャラクターを使用したNFTやメタバースゲームをすぐに潰した。 しかし、これらにはすべて中央集権的な存在に依存するものだった。訴状を受け取る主体が存在した。 台湾のTitan Attorneys-at-Lawの特別顧問であるロス・ファインゴールド(Ross Feingold)氏は、十分な努力がなされれば、時間とコストがかかる可能性はあるものの、NFTを通じてオンチェーンの主体に訴状を送る手段はあり得ると述べた。 「催告書を送るコストが割に合わないと判断することになるかもしれない。『我々は実際に損害を被っているわけではない』と考える状況も想像できる」とファインゴールド氏は述べ、トークンとZynパウチの間に、ブランド毀損や混同を引き起こすような明らかな事例はないと指摘した。 結局のところ、ZynCoin所有者は製品に対する好意からトークンを買っているのであって、広告を買うことのできない会社にとっては、無料広告になっているといえる。 フィリップモリスをはじめとするタバコ大手は、1980年代以来、アメリカではテレビの宣伝を禁じられている。そして1998年、クリントン政権は交通広告、ビルボード(看板)、プロダクト・プレイスメント(TVドラマなどの中に製品を置くこと)も禁止し、事実上タバコ広告は完全に消滅した。