グーグルマップを惑わす複雑な線路
そのまま踏切を渡ってしばらく歩くと、建物の向こうから列車の通過音が聞こえた。この辺りで湘南新宿ラインは東北貨物線から山手貨物線へ枝分かれして、王子駅の隣にある上中里駅の脇を通過し、池袋、新宿方面へ向かう。一方、東北貨物線は上中里駅の手前で新幹線をくぐって田端の信号場へ進む。枝分かれの様子は、上中里駅のホームから遠目にうかがうことができる。 上中里駅前を通り過ぎ、上野方面へ歩き続けた。いつの間にか線路群の幅が100メートルはあるだろうか、太い川のように幅広くなった。道路から見ると、手前に引き込み線が並び、その向こうに東北貨物線の本線、はるか奥に新幹線の車両基地があった。さすが貨物操車場の跡地だけあって圧巻の広さだ。 ついに道路沿いから住宅が消え、建物は鉄道や工事関係の事務所ばかりになった。これぞ鉄道の街だ。ちょっと進んだところで、作業用の鉄道車両と電気機関車が休む一角にたどり着いた。しかも、尾久の車両センターにつながる単線の踏切があり、その線路の先にはディーゼル機関車が停車していた。まさに貨物操車場を思わせる景色だ。
この日はなかなか鉄ちゃんに出会わなかったが、ゴールの踏切付近で電気機関車を猛烈に連写する撮り鉄さんと、遠くの新幹線に手を振る親子連れの姿を見て、「鉄道の聖地」を感じた。 ☆共同通信・寺尾敦史 このコラムを書き上げた2023年5月末現在、マップの空飛ぶ線路を見ることができました。そのうち修正されるだろうと期待しています。