<日本刀のいま>刀を捨てなかった日本人 時代とともに変わったものと守られてきたもの
海外など広がる裾野
アニメとのコラボレーションといった従来の枠にとらわれない試みも行われている。『新世紀エヴァンゲリオン』とのコラボでは、劇中に登場した刀剣類を刀工が実際に製作し、『ヱヴァンゲリヲンと日本刀展』を開催。一昨年の12月から今年3月までに国内9ヶ所で30万人以上を動員した。今年は海を越えてフランスに渡り、現在はスペインで開催中だ。来年は坂城町での開催も予定されている。 日本刀の海外人気は高い。東京・虎ノ門にある刀剣店「日本刀剣」でも、近年は従来からの客層に加え、外国人客が目立つという。同店では、宮入一門をはじめとする現代の作品も多く取り扱っている。予備知識の少ない外国人の場合、日本刀=アンティークという認識で来る客も多いが、「今でも作られていることを知ると、皆さん『日本刀はモダンアートでもあるのか』と感心されます」という。 外国人の作家も増えている。今年の新作技術展では、鍔で2点、柄巻で1点、外国人作家の作品が入選した。
作刀界の使命
現代の日本刀は美術品としての側面が強いが、剣道の中でも抜刀術に特化した居合道では、上級者は真剣を用いて競技を行う。「鉄の展示館」では、今回の展示に合わせて実演(演武)が行われた。 剣術では、刀を抜いて構えるまでのスピードや正確性が勝敗を決するという考え方がある。それを「術」としてだけでなく、「道」にまで高めたのが居合道だと言えよう。形の演武を審査する試合も行われており、海外を含め、競技人口は年々増加傾向にある。 宮入恵氏は言う。「今の日本刀を取り巻く状況は、ある意味でいい方向に向かっていると思います。ただし、『なんでもアリ』の中で、間違った使い方をされないように注意することも大切です。時代の変化に対応しながら、何千年もの間守ってきたものをきちんと伝える。それが今、私たちの使命になっていると思います」。 (文・写真 内村コースケ/フォトジャーナリスト)