AIと俳句で人の輪を作る高齢者向けSNS開発に向け福岡工大初ベンチャー第1号
福岡工業大学には、俳句コンテストに使用する検索AIの開発で構築された膨大な俳句データベースがある。その資産を高齢者同士の触れあいや、さらには俳句からユーザーの心情を解析するサービスに活かそうと、2年後のリリースを目指した開発計画が始まった。 福岡工業大学情報工学部情報工学科の馬場謙介教授がひきいる馬場研究室は、「テキスト処理を中心とするデータサイエンス技術」の研究を行っている。SNS、小説、俳句などの文字情報を解析して有益な知見を発見するというものだ。これまでに、大手飲料メーカーの俳句コンテストに協力して、投稿作品の盗作や重複などを検証するAIの開発にも取り組んできた。 同研究室は、福岡県古賀市と共同で高齢者に必要なサービスの需要をリサーチする目的でスマホ教室を開いたところ、SNSに興味はあるが踏み出せないでいる高齢者が多いことを知った。最たる理由はセキュリティーへの不安だ。そこで、研究室が持つ自然言語処理による文書解析技術を応用して個人情報を保護するAI機能と並行して、高齢者同士が俳句を通じてつながるSNSの開発を進めることにした。 開発の主体となるのが、同研究室から発足した福岡工業大学発ベンチャー第1号の熊猫だ。馬場研究室に所属する修士課程1年生の井崎茉奈氏が発起人となり社長を務めている。井崎氏は、研究室での高齢者との交流体験や高齢者向けコミュニケーション促進ツールの開発経験から、「とくに認知症予防につながるシステムを作って社会に貢献したい」という思いを強めていた。 俳句SNSは、俳句の投稿で高齢者同士がつながることを目的としているが、AIが作品を評価したり、また作品の内容から投稿者の心情を推し量り、精神状態や健康不安を把握する機能も備わるとのことだ。今後2年以内の開発と販売開始を目指す。
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