のび太としずかのトラウマ描写も…映画『ドラえもん』子ども心にゾッとした「不気味&恐怖」シーン
■ドラえもんが故障して絶望
続いては、当時問題になりつつあった環境問題を描いた映画第13作『のび太と雲の王国』(1992年公開)。原作の短編に登場したドンジャラ村のホイくんや、キー坊などが登場してくる、漫画『ドラえもん』ファンにもたまらない作品だ。 同作で描かれるのは、のび太が雲かためガスを使って雲の上に自分たちの王国を作るというストーリー。ただ、実は雲の上には天上人が住んでいて、天上人の世界に入り込んでしまうことになる。 天上人は環境破壊を続ける人類を懲らしめるため、「ノア計画」と称して地上文明をすべて洗い流そうという計画を立てていた。 実際に東京の街が大洪水になっている様子が描かれるが、何より怖く子どもたちを震え上がらせたのが、天上界から逃げようとした場面だろう。見張りの雷雲に襲われて、ドラえもんが故障してしまうのだ。 これまでの映画『ドラえもん』ではドラえもんの道具が頼りになっており、ドラえもんなしではどうにもならなかった。そのドラえもん自体が故障するという展開は初めてであり、当時は「どうするんだろう?」とドキドキしたものである。 故障はふとした拍子に直り、なんとか危機を逃れることはできるが、クライマックスシーンでも2度目の故障を起こしている。結果として、ドラえもんなしでのび太やしずかちゃんが活躍し、彼らの成長を感じることができる。怖いシーンは多いが、映画ならではのキャラの表情が見られる感動的な作品だ。
■エンディングの不思議なカット
映画『ドラえもん』第15作『のび太と夢幻三剣士』(1994年公開)は、当時人気だったRPGを意識したようなファンタジー冒険物のストーリーになっている。 同作では、夢カセットを入れることで夢の世界で活躍できる「気ままに夢見る機」という道具が登場する。しかし、その夢カセット「夢幻三剣士」が曲者で、「現実世界に影響することがある」という説明書きからして非常に怖い。 のび太は、伝説の英雄・ノビタニアンとして夢世界のユミルメ国を支配する妖霊大帝・オドロームと戦うことになる。ただ、このオドロームは、相手をチリにして消してしまうという恐ろしい術を使うのだ。 その術により、なんとのび太としずかちゃんは消されてしまうのである。竜の汗が染み込んだお湯を浴びることで2人とも生き返ることができたが、基本的に人が死なない『ドラえもん』の世界で、一度は死を迎えているのだ。 そして何より不気味に感じたのが同作のエンディング。なぜかのび太の通う学校が山の上に建っており、何の説明もないままエンディングテーマとともにエンドロールが流れるのだ。 「どういうこと?」と疑問符が浮かぶが、これはおそらく作中で語られた「気ままに夢見る機」の注意点「現実世界に影響を及ぼすおそれがある」によるものと思われる。ハッピーエンドと思いきや、最後の最後に不穏な空気が残る同作のエンディングが、なんとも魅力にあふれている。 3作品から、不気味なシーンやちょっと怖かったシーンを紹介させてもらった。子ども向けの作品でありながら、こういった怖さを感じるシーンが散りばめられた映画『ドラえもん』。それだけでなく、環境破壊といった社会問題をテーマにする作品もあり、「大事なことはすべてドラえもんから学んだ」といっても言い過ぎではないだろう。
徳江風波