トランプ2.0「石油産業には大惨事」、フォーブス・アルゼンチンはこう読む
石油産業の活発化が期待されている一方、原油価格がどう変動するかの見通しは立たずにいる。 第2次トランプ政権が発足するにあたって勝者となったといわれる業界の一つが石油業界だ。しかし、原油価格の行方に関しては未だに見通しが立たず、不確実性が残されている。 燃料価格はパンデミック終結以来大幅な高騰に見舞われ、アメリカ国民の大きな懸念の一つとなっているが、トランプ氏はその燃料価格を引き下げるために大幅な増産を約束した。 一般論から言うと、原油価格を下げる可能性を示す要因は複数あり、他通貨と比較した際のドル高、アメリカ輸入品の関税引き上げによる中国経済の減速、そして共和党トップが公約した中東とウクライナの国際紛争の解決などが挙げられる。 しかし、アナリストたちは石油会社や大産油国の収益に影響を与えずに国際価格を引き下げる余力はあまりないと考えている。特に、ここ数年のインフレの過程で石油業界が被ったドル建てのコスト上昇の後では、損益分岐点がはるかに高くなる。 「WTI価格の変動は65ドルから72ドルの間と見ているが、現在の相場からそれほど変わらない。アラブ諸国が事業をたたむことはなく、ドル高でも必要に応じて生産を削減するだろうから彼らも65ドルの下限は守らなければならない」。市場アナリストのフランシスコ・ウリブル氏は言う。 同様に、セバスティアン・ボルガレロ氏(S&Pグローバル副社長兼エネルギーコンサルティング責任者)もフォーブス・アルゼンチンに対し、米シェール石油を扱う大手企業が原油価格を下げるつもりがないことを考慮するとトランプ氏が約束した「ドリル・ベイビー・ドリル(石油をどんどん掘れという合言葉、転じて石油の大量生産を指す)」の影響は中程度に止まるとだろうと説明している。 「アメリカ企業は純利益の最大化にフォーカスしており、そんな彼らにとって価格の下落は好ましくありません。恐竜のいたペルム紀と比べれば、石油を扱える権利は少数の手に集中しています。これらの大企業は財務規律を基軸に行動しており、もし過剰に生産してしまえば、それが価格に影響することも分かっているのです」とボルガレロ氏は指摘する。 よって、世界第2位のシェールガス埋蔵量を誇るアルゼンチンの鉱区、バカ・ムエルタへの影響は、諸企業の収益を維持し、エネルギー転換速度の鈍化で需要計算に時間が稼げ、よいものとなるだろう。ボルガレロ氏は「バカ・ムエルタは世界のオイル・ガス業界が成長するための数少ない貴重な機会の1つといえるでしょう」と付け加えた。 Adcapのシニア金融アナリストであるマティアス・カタルッツィ氏は、イランやベネズエラに対する制裁の可能性など、原油価格の上昇圧力もあるが、規制の枠組みが改善されれば、米国のエネルギー企業が主な受益者になるだろうと語る。 同氏は次のようにも強調した。 「これに関連して、パンパ・エネルギアやYPFのような、より安定的で規制された収益であり、2025年に向けて中国での需要が緩やかに成長するであろう企業は、このセクターにある程度の安定をもたらすことができる。一方、ビスタは輸出市場との相関性が高いため今後も不安定な状況が続くだろうが基本的に長期で見ると、その成長の実績から、我々が最も好んでいる企業である」 再生可能エネルギーに関しては、米国インフレ抑制法の恩恵がなくなる上、気候変動の指針が変わる恐れに大きな懸念が残る。 コンサルタントのアルバレス・マルセロ氏の分析は次のようだ。 「近年の気候問題から考えると、トランプ氏の勝利は世論を急進化させ、気候変動否定論を強調するため、大惨事である。再生エネルギーへの影響という点では、あまり大きな影響はないと思う。アルゼンチンでは、セクター別の政策よりも、IMFとの間接金融による支援の可否に影響があるだろう。私たちは送電法を進めており、それをビジネスチャンスとして提示している。関税以外の経費の壁を回避し、より多くの雇用を生み出すことができる」とコンサルタントのマルセロ・アルバレス氏は分析する。
Forbes Argentina