自分の多忙さを自慢するのはもうやめよう…生産性とウェルビーイングを損なうことも(海外)
忙しさは価値のしるし?
イベント・カレンダー管理用ソフトウェアを開発しているアド・イベント(AddEvent)の成長担当責任者ジョープ・ルーシンク(Joep Leussink)によれば、組織によっては、予定が詰め込まれたスケジュールが、その従業員の価値を表していると解釈されることもあるという。たとえ、時間が最適なかたちで使われていない場合であってもそうなのだ。 「おそろしく多忙なカレンダーを、一部の従業員は地位の象徴として利用している」とルーシンクは言う。 「いわば、自虐風の自慢のようになっているのだ」 それとはまた別の指標(忙しすぎて昼食の時間もない、など)を、自分の「やるべきこと」リストが重要であることの象徴として利用している人もいるかもしれない。 サンフランシスコを拠点とする人材コンサルタントでエグゼクティブコーチのケイト・ウォーカー(Kate Walker)によれば、上司から、「あいつは一日じゅう何をしているのか」と思われないようにするために、カレンダーに予定を詰め込まないといけないというプレッシャーを感じている従業員もいるという。 「予定が詰め込まれたカレンダーは、なんとなく格好よく見える」とウォーカーは言う。しかしそうしたやり方では、その従業員がミーティングに出席する価値の方が、その人が達成する仕事の価値よりも大きくなってしまうおそれがあるとも彼女は話している。 ウォーカーが仕事で関わった複数の企業幹部は、予定の詰め込みすぎに起因する精神的・感情的・身体的な重圧に苦しんでいたという。 「いま現在、カレンダーのせいで、かなり重症の燃え尽きを経験しているクライアントが何人かいる」とウォーカーは言う。 また、ミーティングスケジュールが過酷だと、ブレイン・ストーミングや創造的活動、イノベーションの余地も残らないという。
ミーティングが目標達成の邪魔になることも
ミシガン大学感情・自制研究所の所長を務める心理学者で神経学者のイーサン・クロス(Ethan Kross)によれば、従業員の集中力が「メールへの返信やスケジュール調整」に費やされている場合、そうしたタスクがなければ、その集中力はもっと重要な目標の達成に向けられていたかもしれないという。 スケジュールを管理すれば、そして、受信トレイを見ることに労力を割きすぎないようにすれば、仕事の効率を高め、「仕事をもっと楽しくこなせるようになる」とクロスは言う。クロスは、2025年2月に刊行予定の感情管理に関する本『Shift』の著者でもある。 「たいていの人は、1日に3時間も4時間もカレンダーやメールとつきあうために就職したのではない」とクロスは言う。 クロスによれば、重要な仕事をこなせるようにするために、「ディープワーク」を優先するよう努めている組織もあるという。その手段となるのが、従業員が自分を立て直し、新鮮な気持ちで仕事に戻りやすくする方法を見つけることだ。 自身もリーダーであるクロスは、チームメンバーには、「集中力が細切れになってしまう12時間」よりも、「素晴らしい8時間」を働いてほしいと述べる。 限られた自分の集中力と時間を、最大限に有効活用するにはどうすればいいのか、従業員は常に考えるべきだとクロスは言う。 そのための方法の一つが、それを可能にするためのシステムをどう構築すればいいかを考えることだという。たとえば人によっては、カレンダーをできるかぎり自動化してもいいかもしれない。
何が必要なのか?
ミーティング疲れの一部は、パンデミックの遺産かもしれない。ロックダウン中は多くの上司が、善意と疑いの両方から、「(従業員たちの)進捗を知ろうとして」カレンダーに多くのミーティングを詰め込んでいた。 一部の調査では、ミーティング時間が減り始めていることが示されているものの、ミーティング時間はいまだに、多くの従業員の希望よりはるかに多い、とエグゼクティブコーチのウォーカーは言う。
Tim Paradis