レベニュー戦略全体を統括するCROは、なぜ現代のビジネスにおいて重要視されるようになったのか
・顧客ライフサイクルの統合管理 CROは、マーケティング、営業、カスタマーサクセスの各部門を統括し、リード獲得から営業の受注、受注後の顧客満足度の向上と継続まで顧客のライフサイクル全体をマネジメントし、収益を最大化します。マーケティングと営業の連携というのは「言うは易く行うは難し」です。従来の部門別プロセスは統合に対して抵抗も多いため、そのギャップを埋めるための役割も担います。 それぞれの部門が独立して活動するのではなく、共通の目標に向かって協力し合うことで、シナジー効果を生み出し、収益を最大化できます。 具体的には、リードのフォローアップを迅速かつ効果的にすることでリードから契約への転換率の向上を実現したり、マーケティングキャンペーンのROIを明確にすることでより効果的なマーケティング戦略を立案したりできます。各部門がデータにもとづいた戦略を立案し実行することで、取り組みの効果が明確になり、収益最大化が実現できるのです。 ・フォーキャスト(業績予測)と目標設定 過去のデータや市場の動向をもとにして、将来の収益や受注を予測し、現実的かつ挑戦的な目標を設定します。これには、マーケティングキャンペーンの効果測定、営業のパイプラインマネジメント、カスタマーサクセスの指標分析などが含まれます。 正確なフォーキャストを行うことで、企業全体のリソース配分や投資判断が適切に行えるようになり、収益性の向上に寄与します。第8章のインタビューでも営業パフォーマンス管理ソリューションのリーダー企業であるXactly(エグザクトリー)のCEOアーナブ・ミシュラ氏は、フォーキャストはビジネスの健全性を把握するのに最も重要なことの1つだと話しています。
■ CROとは営業責任者なのか 「CROという役職を掲げていても実態は営業責任者だ」ということは、日本国内に限らずよくあることです。また、CROを営業組織の長のことを示す新たな名称だと捉えている人もいるかもしれません。 しかし、CROと営業責任者との間には明確な違いがあります。営業責任者の管理する領域である営業部門は通常、新規顧客獲得や売上の受注目標達成に焦点を当て、半期や年度ごとの目標など比較的短期的な目標に向けて活動します。 一方、CROは企業全体の収益を最大化する責任を負い、より中期的視点を持って市場の動向や長期的な目標を達成するためにやるべきことを念頭に置きます。そして営業だけではなく、マーケティングやカスタマーサクセスなど、企業の収益に影響を与えるすべての部門を統括します。新規顧客獲得や維持・拡大、そして継続利用の促進もその活動範囲です。 CROの視点は、単なる売上の増加だけでなく、企業全体の収益性と成長戦略に関連したものであり、顧客体験の向上やLTV(顧客生涯価値)の向上のための仕組みの構築など収益を生み出すすべての要素に関連しています。 日本の伝統的な組織体制では、いわゆるカスタマーサクセスの役割を営業組織が担っているケースも多いため、「マーケティングを含むレベニュープロセスのすべてを管理する範囲とし、中長期視点で企業価値向上に向けた収益性向上に責任を持つ」と捉えるとわかりやすいかもしれません。
川上 エリカ/丸井 達郎/廣崎 依久