貴重な「松本ピアノ」、演奏権を返礼品に 千葉・君津
千葉県君津市は、かつて市内にあったピアノメーカー「松本ピアノ」で製造されたピアノを使って、市の知名度やイメージアップにつなげるシティープロモーションに乗り出した。12月には、ふるさと納税の返礼品として、1200人収容の君津市民文化ホールの大ホールで、同メーカーのピアノを4時間演奏できる。【浅見茂晴】 【写真まとめ】高さ2.9mの物も…各地の独特過ぎる返礼品 同メーカーは松本楽器合資会社、松本楽器販売店として1904年、東京で設立された。現在の同市常代で1865年に生まれた松本新吉が、横浜のオルガン製造所で働いた後、米国でピアノ製造技術を学び、帰国後に起こした。明治期は「山葉」「西川」と並ぶ3大ピアノメーカーの一つとして、名をはせた。 工場は関東大震災(1923年)で被災し、再建後は長男に譲った。松本自身は古里・君津に戻って「松本ピアノ八重原工場」を設立、再出発した。 国産材にこだわり、響板にはエゾマツを使用。「スイート・トーン」と呼ばれる柔らかな音色が特徴。その後も職人の手によるピアノづくりに徹してきたが、機械化や大量生産の時代の波にのまれ、同工場は2007年に閉鎖された。 同メーカーで製造されたピアノを守っていこうと、市民団体「松本ピアノ・オルガン保存会」が発足。コンサートや現存するピアノの調査・修復に取り組んでいる。日本のピアノ製造史に名を刻む同メーカーのピアノを、君津ならではの魅力の一つとして広く発信している。10月には、千葉市若葉文化ホールにピアノを持ち込んで演奏会を開き、歴史も紹介した。 ◇♪応接室にも設置 君津市も石井宏子市長が応接室にピアノを設置。来客者に、石井市長が直接、紹介している。10月30日には、応接室でミニ演奏会が開かれた。 君津市民文化ホールには、計12台の同メーカー製造のピアノが修復・保存されている。石井市長は「唯一無二の貴重な『松本ピアノ』は市の文化資産であり、広めていきたい」と意気込んでいる。