中国の過剰生産能力、早期解決期待できず-日米経済摩擦に倣う展開も
(ブルームバーグ): 中国製造業の過剰生産能力を巡る不満の声がますます高まっているが、是正に乗り出せば脆弱(ぜいじゃく)な経済への逆風になりかねず、中国政府が動く兆しはない。
中国製電気自動車(EV)への関税賦課をちらつかせる欧州連合(EU)の指導者は今週、中国の過剰生産能力をあらためて批判。フォンデアライエン欧州委員長は中国の習近平国家主席との会談を前に「早急な」行動を期待していると述べた。
フォンデアライエン氏は恐らく失望することになるだろう。バッテリー産業の成長を減速させる中国政府の案が8日公表されたが、拘束力はない。
一方、中国国家発展改革委員会(発改委)は先週、クリーンエネルギー製品分野での中国の生産能力が過剰との主張に対し、4部構成の反論を公表。自国産業の競争力は補助金ではなくイノベーション(技術革新)によるものだと訴えた。
それはEVや太陽光パネルといったハイテク産業に関する中国政府の決まり文句だ。習主席が描く景気回復の青写真で、これらの産業は極めて重要であり、中国はどんなに強く求められても恐らく支援をやめないだろう。他の諸国にとっても戦略的に重要な産業分野であり、貿易障壁が高くなる理由がそこにある。
2方面からのアプローチ
HSBCホールディングスのアジア担当チーフエコノミスト、フレデリック・ニューマン氏は「中国の過剰生産能力の問題に即効性のある単一の解決策はない」と指摘。クリーンエネルギーの根本原因は中国の「活発な投資」だが、より伝統的な産業では「特に住宅建設の失速」に伴う需要の弱さが問題だと分析した。
ニューマン氏によれば、中国住宅市場の安定と消費支出拡大に関し、需給バランスを図る「2方面からのアプローチ」が最終的に必要だ。しかし、中国の過剰生産能力を強く批判する人々さえ、それが難題だと認める。
イエレン米財務長官の最近の訪中時もこの問題が中心となった。財務長官のチームは中国が政府資金を主要産業に投入し、赤字企業にてこ入れし、地場企業の存続を脅かす輸出品で世界市場を席巻していると繰り返し批判した。