【侍ホースマン連載4】国枝栄師、ステレンボッシュに託す香港初タイトル/香港ヴァーズ
国内外G1・23勝を誇る名伯楽・国枝栄師(69)だが意外にも香港のG1とは縁がない。 「マツリダゴッホ(08年クイーンエリザベス2世C6着)もダノンプラチナ(15年香港マイル7着)ももう少しやれると思ったんだけど、ちょっと残念だったよね。香港でのタイトルはもちろん欲しい。当然いい結果をという思いはある」と熱く語る。 今年、9年ぶりに香港の地へ送り出すのが桜花賞馬ステレンボッシュだ。3歳牝馬の香港ヴァーズ制覇は00年のG1昇格以降、わずか2頭だけ。決して楽な戦いではない。それでも、「ここでいい結果が出ればこの先、海外も視野に入ると思う。選択肢を広げる意味でもここへ挑戦することにした」と、世界の強豪とぶつける決断を下した。 桜花賞、秋華賞出走時に栗東トレセン滞在を経験。初の海外遠征となるが、ホームの美浦を離れての調整にも不安の色はない。「落ち着いた馬だし、環境変化は気にならない。シャティンは(馬にとって)いい雰囲気の競馬場だし(主催者の)オペレーションもしっかりしている。いい環境で競馬がやれると思うよ」と現地での調整も前向きに捉える。 4日のシャティン競馬場の芝コースで行った最終追い切りでは、桜花賞以来のコンビとなるモレイラ騎手が動きの良さを絶賛。国枝師も精神面、動きの質ともに合格点を与えた。名伯楽の悲願達成へ、期待の名牝候補がここから世界へ羽ばたく。【井上力心】(おわり)