<独自>受刑者に心情を伝える制度 心情伝達の現場を初取材【WBS】
事件や事故の被害者遺族が、受刑者に気持ちを伝えられる、「心情等伝達制度」の実際の現場をテレビ東京がメディアとして初めて取材しました。利用した遺族の思いとは? 埼玉県に住む小沢樹里さん。16年前、夫の両親を交通事故で失いました。 「本当に優しい義父と義母で、私もこういうふうに幸せになれると思って」(樹里さん) 2008年2月、家族旅行から帰る途中、飲酒運転の対向車に正面衝突され義父と義母は死亡。車を運転していた義理の弟と妹も重傷を負いました。
事故直後に撮った車の写真を見せてくれました。 「生臭さというか独特な臭いは覚えている。こんな状態になるということは相当痛かったと思う」(樹里さん) 事故を起こしたドライバーは、危険運転致死傷の罪で懲役16年の実刑を言い渡され、地方の刑務所に収監されました。 こうした中、2023年12月、被害者遺族の気持ちを受刑者に伝え、更生につなげようという「心情等伝達制度」がスタートしました。 樹里さんは今年1月、制度を利用。テレビ東京は初めて撮影を許可されました。被害者遺族が話した心情に加えて、表情や身振りなど、言語外の情報も刑務官は記録し、書面にまとめて受刑者に伝えるという仕組みです。 「2008年2月17日から、どのように過ごしていますか。あなたがこの先の人生で人に感謝されたり、人を助けたりできる人間になってほしいです」(樹里さん) 後日、受刑者への心情伝達が行われました。どんな様子だったのか担当した刑務官の上司が答えてくれました。 「被害者や遺族が伝えたいと希望されることをしっかりと受刑者、加害者の側に受け止めさせるために担当刑務官はある程度の時間をかけて説明をしていた」(担当刑務官の上司)
この2週間後、樹里さんのもとに受刑者の反応が書面で届きました。謝罪から始まり、酒を断つことや、命日に事故現場で花束を手向けることを約束。それから数日後、受刑者は仮釈放されました。 「裁判の最中に、気づけなかった加害者の性格や本質的には謝罪したいのに謝罪できない人が多いと改めて気づいた」(樹里さん) 迎えた命日。樹里さんたち遺族は事故現場を訪れ手を合わせました。そこで何かに気づいた樹里さん。 「確かに紫と白の花束がある」(樹里さん) 2人が亡くなった場所からおよそ40メートル離れた場所に花束が置かれていました。 「加害者は交通事故を忘れないでほしいし、年に一度はここに来てもらいたい」(樹里さん) ※ワールドビジネスサテライト