田中圭と吉田鋼太郎が相変わらずの魅力を見せた、ドラマ「おっさんずラブ -in the sky-」
今年1月、大人気シリーズが5年ぶりの続編「おっさんずラブ-リターンズ-」として帰ってきた。シリーズの始まりは、2016年の単発ドラマ。女好きだけどモテない33歳の独身男・春田創一が、上司をはじめとする男たちに愛される"未曽有のモテ期"を迎えるという抱腹絶倒のラブコメディは、大きな話題を呼んだ。2018年には待望の連続ドラマ化が実現する。 【写真を見る】主人公・春田を演じる田中圭 口コミやSNSで人気が広がり、グッズや書籍に海外リメイクまで様々な二次的エンターテインメントで社会を席巻した。真っ直ぐでピュアなラブストーリーや世界観が評価され、数々の賞を受賞。ドラマ版のヒットに続いて「劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~」(2019年)として映画化されるなど、世界中で社会現象を巻き起こした。シリーズの主人公"はるたん"こと春田役は田中圭が務める。そして、ヒロインとなるピュアすぎる乙女心を隠し持つおっさん上司・黒澤武蔵には、日本が誇るシェイクスピア俳優・吉田鋼太郎をまさかのキャスティング。ライバルとなるイケメンでドSな後輩・牧凌太を林遣都が演じるなど、絶妙な配役も人気の理由の一つに挙げられるだろう。 映画化と同年、航空業界に舞台を移したパラレルワールドドラマ「おっさんずラブ -in the sky-」も制作された。独身ポンコツダメ男・春田創一は、35歳にして突然リストラされてしまい、途方に暮れていたところを、高校時代の後輩に救われ、空の仕事に転職。アラフォー男性CAとしての新生活がスタートする。新しい仕事に奮闘するも相変わらずのポンコツぶり。しかし、憧れのグレートキャプテンこと機長・黒澤武蔵は、密かに春田へ想いを寄せていた。また、副操縦士の成瀬が女性と口論になっているところに出くわした春田は、「ほかに好きなヤツができた」というセリフとともに成瀬から突然キスをされる。さらには、社員寮で隣に住む兄貴分の整備士・四宮要からも「俺もキスできるよ」と真顔で告げられてしまう。ラブバトルは急展開を迎え、ドロドロなモテ期が再び到来する。 物語は大地から空へ舞台を移すが、主人公・春田とヒロイン・黒澤は、田中と吉田が続投する。今作でアラフォーとなった"はるたん"だが、相変わらず真っ直ぐで不器用で情に厚く、とにかく優しくてちょっぴりおバカな男のままだ。おっちょこちょいだが目の前のことにいつでも懸命な姿は、愛すべき主人公そのもの。人助けをしてCAデビュー当日に遅刻するなど困っている人を放っておけないお節介な性格も、仲間を大切に思う熱意が空回りしてしまうところも彼の魅力の一つだ。ラブバトルに巻き込まれ翻弄される姿も、ポンコツぶりもすべてが愛らしい。2000年にデビューし「WATER BOYS」(2003年)で注目を集め、これまでに数多くの作品に出演してきた田中だが、同シリーズを機に本格ブレイクした。どんなジャンルもキャラクターもこなしてきた実力派ゆえに、コミカルな演技も自然体で魅せる。田中が演じたからこその愛され主人公と言える。 そして、おっさんながらヒロインとなる黒澤は、今作では機長を務めるパイロット。"グレートキャプテン"と呼ばれるほどに技術や人柄ともに秀で、みんなを気遣う優しい人物だ。渋くてかっこいい頼れる男だが、その見た目に反して可愛らしさ全開のピュアな乙女のような心を持っている。いつも全力で仕事に励む春田とフライトを重ねるうちに少しずつ彼を認めるようになり、恋心が芽生え始める。数多くのシェイクスピア作品に出演するなど長らく舞台で活躍してきた吉田が、真剣な表情と良い声で春田への愛を叫ぶ。全力で恋するおっさんを熱演した。真面目に演じているから面白さと愛らしさが生まれている。 彼らの他に、不愛想な孤高の副操縦士・成瀬を演じた千葉雄大や、職人肌の航空整備士・四宮役の戸次重幸らも物語を盛り上げる。空のお仕事を舞台に、人を愛するとは何かを問う本作。何度見ても笑えてほっこりと癒される。性別も年齢も関係ない愛の素晴らしさを描くシリーズで、田中らキャスト陣の本気が彼らの新境地を切り開いた。 文=中川菜都美
HOMINIS