伊東健人「30代になって“怖いもの”が増えた」年齢を重ねたからこそ見えてきたもの
今やってることの“精度”をもっと上げたい
40代に向けて、30代後半では“挑戦”よりも“極める”ことに重心を置きたいと語る。 「新しいことにチャレンジしたいというよりは、お芝居や歌など、今やっていることの“精度”をもっと上げたいと思っていて。この仕事って、自分が出したいって思った声を出せることが最高なんですが、やっぱり“ズレ”が生じてしまうこともある。それは人間にとっては当たり前のことで、仕方がないこと。だって全くズレがなければ、野球選手はみんな10割打てるということですから。そのズレを埋めていって、もっと理想形に近づけたいという欲はみんな持っていると思いますが、その欲が自分の中で一番強いですね。30代中盤、40代に差しかかるぐらいの今が、心技体のバランスが一番いいと思うんです。体力もまだあって、心も安定しているし、それに技術もちょっと伴ってきたような気もするし……これは気のせいかもしれないですけど(笑)。今のバランスじゃないとできないことはあると思うので、今はそこを極めていきたいな、と。その結果、新しい挑戦に足を踏み入れていることもあるんですけどね(笑)。アーティスト活動もそうですが、流れに身を任せてチャレンジするというのも、それはそれでいい。自分としては声優の道を極めるための一つで、実際に還元できるものがたくさんあると思っています」
現時点で、“還元できている”と感じることを聞いてみると……。 「“こんな音楽のアプローチの仕方があるんだ”って学んだことを、キャラクターコンテンツに持ち帰ってみることもありますし、そもそも幅広い仕事をしているおかげで“自分の体力の限界”も分かってくるんです。ライブやって、朗読劇やって、アフレコ仕事もして……意外と自分やれるな、って。例えば1週間に1本の仕事しかなかったら、もし同時進行でいくつかの仕事をする時に、体力もメンタルも持つのかが分からないじゃないですか。でもいろいろな仕事をやらせていただいているからこそ、今の自分のキャパを知ることができるし、結果的に要領も良くなってきました。たまにキャパオーバー気味で、ミスしまくるときもあるんですが(笑)。もちろんその瞬間は落ち込みますが、声優の仕事は何作品も同時に動いていることがほとんどなので、嫌でも切り替えなきゃいけない。『あー、大きいミスしちゃったな……。いや引きずってる場合じゃない、次の現場行かなきゃ!』って。でも、飽きっぽい自分にとっては、それが性に合っています」 多趣味でも知られる伊東さんだが、今一番“楽しい”と感じる時間とは? 「今ハマっていることを聞かれたら、実は芝居かもしれない。それほど本当に仕事が楽しくって。それは作品が持つ力や、一緒にアフレコに臨む仲間たちのおかげなんですけどね。『今日も楽しかったな』って一日を終えることが多くて、それは本当に幸せなことだと思います。 それと、仕事と仕事の合間、ちょっと2時間空いたな、みたいな時間も結構好きで。ショッピングしたりお茶したりしているのですが、この時間があるのとないのとでは、自分の気持ちの余裕も変わってくるかもしれません。そんな時間も大切にしながら、これからも楽しく仕事していきたいですね」 伊東健人/Kent Ito 10月18日生まれ、東京都出身。2011年に声優デビューし、アニメ、吹き替え、ゲーム、ナレーションなど幅広い作品で活躍。2022年9月21日、川谷絵音のプロデュース楽曲『真夜中のラブ』でアーティストデビュー。2024年3月27日には2nd EP『咲音』をリリースし、4月14日にソロとしては初となるワンマンライブを東京・豊洲PITにて開催する。