ユーロ下落、選挙リスク続く見通し-政治の不確実性が欧州覆う
(ブルームバーグ): フランスとドイツの与党が欧州議会選挙で敗北を喫したことで、欧州連合(EU)内の政治的不安が深まり、ユーロに新たな圧力がかかりそうだとストラテジストらはみている。
9日の議会選では仏独の極右政党が躍進し、マクロン仏大統領とショルツ独首相は大きな打撃を受けた。
フランスではマクロン大統領が国民議会(下院)を解散し、選挙を実施すると表明し、ユーロは対ドルで1カ月ぶりの安値まで下落。
7日には予想より強い米雇用統計が発表され、ドルが大きく上昇。すでに圧力を受けていたユーロが一段と売られた。
フランス、1997年以来の下院解散-極右躍進阻止へ大統領が大きな賭け
ストラテジストたちは、パリ夏季五輪の開催を目前に控えた仏下院選で、極右勢力が勢力を強め、法案を推し進めるマクロン大統領の能力が損なわれた場合、特にフランスの経済見通しにどのような影響が及ぶかに注目している。
クレディ・アグリコルのG10FX調査・戦略責任者バレンティン・マリノフ氏によれば、投資家が財政・金融統合強化に向けた欧州の決意を疑い始める可能性もある。
同氏は「ここ数週間で外国為替市場をけん引し始めていたばかりのユーロのポジティブなセンチメントに打撃として受け止められかねない」と述べ、「周辺国の国債利回りスプレッドが再び拡大すれば、ユーロにとってマイナスとなり得る」との見方も示した。
ユーロは10日、一時0.5%下落し1ユーロ=1.0751ドルとなった。フランス国債先物は値下がりし、ドイツ国債先物より大きく売られている。
政治リスク
米商品先物取引委員会(CFTC)の最新データによると、レバレッジドファンドは最近、昨年8月以来初めてユーロに対してネットロングに転じていた。先週の欧州中央銀行(ECB)利下げに先立ち、ユーロは今年4月の安値から約3%上昇していた。
モルガン・スタンレーのマシュー・ホーンバック氏らストラテジストは6月8日付のリポートで、ECBがその後の指針を示さなかったため、ユーロは米国のデータと米連邦公開市場委員会(FOMC)の動向により大きく左右されることになると指摘した。