コロナより恐ろしい? 「ウイルス性結膜炎」がサウナで蔓延中!?
すっかり国民的ブームとなった感のあるサウナ。仕事終わりに「今日はどこでととのおうか?」などと楽しみにする人が老若男女を問わず急増中。サウナ業界は活況を呈している。 【写真】結膜炎治療のための点眼剤 だがこの夏、意外な落とし穴にはまるケースが増えていることはあまり知られていない。サウナー歴8年の生保営業マン・浜本直樹(57)さんが自身の体験をこう振り返る。 「近所のサウナにオープンと同時に飛び込むのが私の日課でした。清掃したてのサウナ、そして水風呂に飛び込むのは本当に気持ちよいですから。ところが7月のある日、いつものように行きつけのサウナに行くと、この日はたまたま混んでいて水風呂も隣の人と肌が触れるような距離感。げんなりしながら家に帰り、仕事をして、寝た翌日。両目が痛くて開けられない事態になっていたのです」 眼科が開くのを待って、オープンと同時に駆け込んだ浜本さん。そこで待っていたのは、辛い現実だった。 ■1週間の出社停止 浜本さんが言う。 「受付しようとしたら、僕の赤い目を見たスタッフが『それ、"流行り目"の可能性高いです。中に入らないで外で待っててください』と大声で怒鳴ってきて。問診票などは病院の外、路上でやらされました。 1時間近く待たされ、ようやく医師の診察となったんですが、診断はウイルス性結膜炎。ものすごく流行ってるみたいで、『もしかして◎◎銭湯行ってます? あそこから何人か出てて......』とドンピシャでいきつけの銭湯を言い当てられました」 浜本さんの受難はこれだけでは終わらない。結膜炎と聞いて侮るなかれ。その感染力はすさまじく、出社停止を宣告されたのだ。 「人に伝染す可能性が極めて高いようで、会社には1週間行くなと言われました。必要なら診断書も書くと。正直、たかが結膜炎でこんな目に遭うとは思っていなくて......。 ちなみに眼科の会計の際も申し訳なさそうなに『交通系IC使えます。できれば非接触型でお願いできれば』と言われました。家に帰って妻に報告してからはバイキン扱いです。ほとんど部屋から出られず5日目。気が狂いそうです」(浜本さん) 発症したその日、浜本さんの体温は38度まで上昇。寒気と悪寒に襲われ、コロナの併発も疑っている。まさに踏んだり蹴ったりなのだ。 ■サウナやプールで感染する理由 医師の井上裕章氏によれば、ウイルス性結膜炎の潜伏期間は短いもので1日、中には1週間程度してから発症に至るタイプもあるという。たしかに、世間では今猛威を振るっているようだ。 「人に感染しやすいタイプのものは『流行り目』と呼ばれ、目が真っ赤に充血する。痛み、かゆみ、ゴロゴロとした不快感が続き、涙が出続けたりまぶたが腫れることもあります。目ヤニに悩まされる人も多いです。 こうした症状が出始めた際に涙や目をぬぐったタオルを共有してしまうと、感染のリスクは高まります。あるいは便の中にもウイルスが潜むため、サウナやプールで感染する事例があるのだと思われます」(井上医師) その言葉どおり、前出の浜本さんのサウナ仲間には、ここ数ヶ月で結膜炎に罹患した人物が複数いるという。治療には点眼薬を投薬するのが一般的なアプローチだ。 「ステロイドのものと、抗菌のもの、2種類を5分間以上の間隔を空けて、2時間ごとにやってくださいと言われました。もう5日目ですが、なにも変化がなくて焦っています。 目は痛いし、赤いままだし、大好きなサウナもいけないし。コンタクト入れるのも一苦労。あ、コンタクトはなるべくするなって言われてたんだった......。とにかく不快でたまりません」(浜本さん) サウナーを恐怖に陥れる「ウイルス性結膜炎」。誰もが決して他人ごとではないことを肝に銘じるべきだろう。 ●井上裕章 2014年、東京大学医学部卒。外科医として経験を積み、東京・六本木に「ヴェアリークリニック」開業。性器形成を得意とする。性感染症などにも精通 文/桜井カズキ 写真/photo-ac、浜本直樹さん提供