ジャガー横田による林修の告発はなぜスベった? 横田一家全員に共通する「ナメられたら負け」という強烈な序列意識
林先生の告発はなぜスベった? 礼儀よりもメンツにこだわっているように見えてしまったケンカの下手さ
告発が成功する条件は、自分より格上の相手に仕掛けることだ。そうでないと、かえって自分が弱いものいじめをしたように見えてしまう。そして糾弾したからにはやり返されるリスクも背負うべきであり、よってたかって一人をつるし上げては逆に反感を買ってしまうだろう。 そう考えると、ジャガー一家のケンカの仕方はちょっと下手だったと言わざるを得ない。林先生を格上の相手だと認めているのだろうが、フワちゃんや木村さんに比べるとだいぶ小粒で、御しやすそうな相手を選んだなとも感じてしまう。 またジャガーさん個人が林先生に文句を言うならまだしも、家族の動画内でわざわざ水を向け、息子に実名を挙げさせる、というやり方はいただけない。あいさつを無視したというのが事実ならば確かに無礼だが、一家総出でその場にいないタレントをけなすのも大人げないだろう。大維志さんは「僕を評価してくれているって聞いて。ウェルカムな感じと思ったら、すげぇスカしてて、ムカついた」と発言していたが、こうなるとあいさつというマナーの話ではなく、思ったほどチヤホヤしてくれなかったという不満がメインに聞こえてしまう。実際にジャガーさんも、「次からはあいさつしなくていいかなって、私よりも年下かもしれないし」と、年長者は礼儀を欠いてもいいと取れるような発言をしている。 常識やマナーの是非というより、「自分をナメたら許さない」という怒り。ジャガーさん一家の歴史を見ていると、長期的な利益よりも目先のメンツにこだわるケースが多いように思う。それは一家全員に共通する、「下に見られたくない」という強い序列意識のせいではないかと思うのだ。
空回りを繰り返す大維志さんや木下医師に見る強烈な序列意識 人気者になりたいなら虚勢よりも「受けの美学」
例えば大維志さんに見られるのは、「一般庶民とは違う俺」という強迫観念に似た自意識である。インスタのプロフィールでは「アーティスト」と名乗り、高校受験時には英語で学校に悪態をつく投稿も。9校不合格になりながら最後に受かった高校では、「寮母の作るごはんがマズい」と話して炎上した。学校関係者や寮母さんが心を痛めるのでは、という指摘は意味がない。庶民を思いやるのは庶民のやること。特別な自分は、庶民にコンテンツを提供する立場、という意識があるのだろう。足の手術をした時は「肝硬変手術」と偽り、「有識者なら分かってくれると思った」と開き直った態度には、あきれた人も多かったようだ。 モラルより社会的地位、という意識は、父・木下博勝医師にも感じられる。過去にはブログで「中卒のジャガーから、学ぶべきことが多く」(※現在はブログ削除)とつづるなど、学歴がない人間へのさげすみがうっすら漂う。「医者の給料いくらだと思っているんだ」とスタッフに言ったり、「男の子を産んで医者にしてほしい」と女性に迫ったとされるスキャンダルもあった(木下氏はどちらも否定)。やはり彼の言葉からうかがえるのは「医者は、そして医者である自分は、上位の人間だ」という強烈なプライドと序列意識である。家庭ではジャガーさんを序列の下に置き、男二人でバカにするような言動の数々には、同情の声が寄せられていた。 一方でジャガーさんも、たたかれる人は努力が足りない人、と思っているのかもしれない。松本人志さんの性加害報道を受け、自身のYouTubeで「(有名人からのアプローチを)受ける側がしっかりしていれば、そういう間違いはない」「OKだとみなされる行動を取る女性もダメだと思う」と発言して、夫からたしなめられていた。ジャガーさんも過酷な家庭環境を経て、本来は気弱な性格ながらも人気女子プロレスラーとして実績を積んできた成功体験があるからこそ出た言葉なのかもしれない。 そんな一家にとって、あいさつを無視されるというのは最も分かりやすい「目下扱い」であり、「ナメた」態度であり、地雷だったに違いない。ただ、いちいち序列を気にするのは小心者の証し。私刑狙いの告発をしたところで、どっちもどっち、と思われたら損をする。大維志さんの受験合格やダイエット成功など、一家にとってポジティブなニュースも今までたくさんあった。最近はNETFLIX「極悪女王」の大ヒットもあって、ジャガー家には追い風が吹いていたのに。いい意味で注目されても、炎上を誘う悪ノリや、自分たちのメンツをつぶした相手をこき下ろす場として使ってしまってはもったいない。 社会的影響力の大きい人間になりたいなら、自分がいかに強いかをアピールするより、引き際が分かる・いい負け方ができる、というのも大事なはず。ジャガーさんもここはグッとこらえて、修業時代にたたき込まれた「受けの美学」を、夫や息子ともども見せてほしいものである。 冨士海ネコ(ライター) デイリー新潮編集部
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