SRHRへのバックラッシュ激化 女性やLGBTQの分断を煽る攻撃に連帯して対抗
セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス&ライツ(SRHR=性と生殖に関する健康と権利)の確立へのバックラッシュ(反動)が世界各地で起きている。日本では2023年6月のLGBT理解増進法施行を機に、性的マイノリティ、特にトランスジェンダー(生まれたときに割り当てられた性別と性自認が異なる人)への憎悪を煽る言説がSNSを中心に激化し、ヘイトが社会を分断する状況が生まれている。 このような現状を把握し、バックラッシュの傾向と連帯の手立てを考えるイベントが公益財団法人ジョイセフ、国際家族計画連盟(IPPF)の主催で4月22日に東京都内で開かれ、SRHRの推進に携わる登壇者たちが語り合った。
包括的性教育(CSE)の推進に長く携わってきた田代美江子さん(埼玉大学副学長)は、2000年代の「性教育バッシング」と20年代以降の「包括的性教育バッシング」を比較。いずれも「ジェンダー平等やSRHRが大きく前進しようとするときに起こる」とし、政治的権力による攻撃、性教育実践やジェンダー平等を目指す人たちの分断を煽る攻撃という共通点があると指摘する。そして「時を超えて繰り返されるバッシングから確信するのは、まさにCSEが重要だということ。人権を基盤としたCSEは公正で思いやりのある社会の構築を担う人を育て、公正な社会をつくることにつながる」と訴えた。 松岡宗嗣さん(一般社団法人 fair 代表)は、理解増進法整備の議論が本格化した20年代以降、デマに基づくトランスジェンダーへのバッシングや「性自認」という概念への攻撃が、法案反対論の中心となっていったと説明する。 「フェミニストや右派ではない女性の中にもトランスジェンダーバッシングに加わっている人がいる。このような分断が生まれる背景にはジェンダー不平等な日本社会の現状とSRHRの視点の欠如があり、保守派への対抗とは異なるアプローチが必要」と分析。「トランスジェンダー女性とシスジェンダー(生まれたときに割り当てられた性別と性自認が一致している)女性の安全と権利を守ることは矛盾せず、両立する。共通する社会構造を問題視して変えていく視点を強く持てば持つほど、すべての人のSRHRと人権を守るために手を取り合ってつながっていける」と強調した。