「“ギャンブルの終着駅”の先に野菜あり」 リスクを取ってリターンを得る、競輪好き農家が語る勝負の心得
競輪は荒れたレースを「波乱」と呼び、ビジネスや金融の世界での「ブラックスワン」という言葉が近いかもしれません。「黒い白鳥」が発見されるような予想外の出来事は、危機にもなれば好機にもなります。 胸を膨らませて、配当が1万円以上の「万車券」や「十万車券」を狙いますが、筆者の車券(競輪の投票券)はなかなか当たりません。負けると、モヤモヤした感情が残ります。 この気持ちの揺れ動き、どうすればいいのでしょうか。前回はnetkeirinで予想記事を執筆している「チャレンジ魂」のAさんに気持ちの整理術を聞き「おなかがよじれるような笑える映画を見てスッキリする」「寝るのが一番」などのアドバイスを得ました。 今回も、有識者の考え方をいくつか紹介してみたいと思います。
競輪という「ギャンブルの終着駅」からバスに乗り換えて
競輪好き農家の豊嶋和人さんは香川県で農業を営む土壌医で、土づくりの専門家です。豊嶋さんは農業と競輪の意外な共通点について、農業の仲間たちに語ります。 「競輪というギャンブルの終着駅から、さらに一日に二本しかないバスに二時間揺られて到着するのが、露地野菜や思っとる。だって競輪好きなわしは、こんなにも夢中になってるんやから」(出典:「豊嶋和人のよもよも話」『地上』2023年11月号、家の光協会) ギャンブルの予測は簡単でありません。豊嶋さんは競輪よりもギャンブル性がありそうな「露地野菜」の栽培を例に挙げて、リスクを取った上でリターン(収益)を得ることには学びがあると説きます。露地野菜とは温室などを使わずに露天の畑で栽培される野菜のことで、天候や病虫害に左右されるなどのリスクがあります。 「リスクを取ったうえで、リターンを得ることがだいじなんや。ギャンブルである以上、負けたことの尻拭いを、意思決定していない者にはさせられない。だから小さな経営体こそ、いろいろ勉強し、予測して、勝負するのには向いてるわけや」(出典:同上) 競輪にも農業と同じく天気の影響があります。農家は作物を高値で売るために相場を張り、競輪ファンはオッズ(配当の倍率)を注視。よく研究し、未来を予測します。結果として、勝ちも負けもありますが、その責任を意思決定していない他者に押しつけることはできません。 とりわけ、少人数で切り盛りする経営体(農家)と競輪ファンとには、勝負と責任のバランスの取り方に共通する決断がありそうです。