慣れない土地でうまくやるには? Iターン就農の若手 人との距離感悩みの種に
農業だけでなく、地域の担い手としても期待される、若手のIターン就農者。一方、慣れない土地での生活や人間関係に戸惑う人も少なくない。実際にどのような悩みを抱えているのか、地域とうまく関わるためのポイントを探った。 新規就農者の困っていること1位~3位の回答割合 就農10年以内の新規就農者に全国農業会議所が行った調査(2021年度)によると、生活面で困っていることとして20、30代が上の世代より多く挙げるのが「集落の人との人間関係」「集落の慣行」「プライバシーの確保」「村づきあいなどの誘いが多い」など地域に関する悩みだ。
行事の活発さ目安
「消防団や祭りの練習など、地域行事が結構ある。中にはそれをおっくうに感じる移住者もいる」と言うのは、3年前に移住就農した20代のトマト農家だ。「移住する前に、行事がどの程度ある地域なのか教えてもらえると、ミスマッチが減るのではないか」とみる。 愛媛県久万高原町では5年間で15人の移住者が就農し、ほぼ100%の定着率を誇る。 町内は、行事が活発で地域のつながりが濃い、プライベートが確保しやすい──など、さまざまな地区がある。同町は各地区の特徴を知ってもらった上で移住者の希望を調査。移住後も、JAや県の指導員が定期的に巡回し、地区の篤農家も相談役に就くことで、就農者の不安を解消している。 23年4月に同町で就農した宮崎卓海さん(39)は、町内でも地域の活動が活発な二名地区に家族で移住した。地区の神社の祭事を担う氏子などをこなしながら、トマト作りに励む。地域住民とは農業の他、趣味や家族のこともよく話すなど、良好な関係を築く。 宮崎さんは、自身の経験から「農家になることと同じくらい、地域を担うことも前もって真剣に考えることが大事」と言う。「就農前は農業のことばかりを考えがち。でも、現実には地域から求められることが多々ある。心構えができているか否かで、受け止め方は変わる」と指摘する。
同世代いない孤独
同世代の少なさに孤立感を抱くケースもある。就農3年目の20代のシイタケ農家は「周囲のほどんどが70代で、シイタケ作り以外の話ができる人が少ない。同世代がいてくれたら」と打ち明ける。 就農7年目で40代のかんきつ農家も「人との距離感が、上の世代は異なる。また、地域の農作業の仕方に従う・従わないでちょっとしたトラブルに発展したことがあった。似た境遇の人に話を聞いてもらえる場がないと、つらい」と振り返る。