鉄鋼業界の仕事内容、魅力、やりがいとは?市場動向や将来性、志望動機のポイントも紹介【例文あり】
鉄鋼業界の現状と課題
鉄鋼業界の現状と課題について解説します。 ■鉄鋼業界の現状 鉄鋼と非鉄金属(アルミニウム・銅)産業は、日本の製造業全体のGDPのうち、約1割を占めています。現在、鉄鋼・非鉄金属産業は、産業機械、自動車、情報通信機器など、日本における多様な産業の基盤となるものとされています。 世界鉄鋼協会(worldsteel)によれば、2023年の「世界の鉄鋼需要量」は18.2億トン、2024年は18.5億トンと予想されています。また、2022年の「日本の粗鋼生産量」は、8924万トンで世界第3位となっており、うち、鉄鋼輸出実績(全鉄鋼ベース)は3228万トンです。 鉄鋼業界のさまざまなメーカーは、グローバルに事業を展開しているために海外需要の比率も大きく、近年は、特に経済発展著しいアジア地域への輸出が増加しています。 日本の鉄鋼業界は、長年にわたって培われた高度な技術力があり、海外の鉄鋼メーカーでは生産が難しい「高級鋼材」に強みを持っています。 しかし、国際競争が激しくなる中、近年は中国などの鉄鋼メーカーが生産力を増強しており、中国メーカーが世界の粗鋼生産量の半分程度を占めるほどになっています。しかし、中国経済の成長率が鈍化し、国内需要が低迷したことから、中国メーカーは安価で鋼材を輸出し、日本の鉄鋼メーカーがその影響を受けている側面もあります。 国内では需給ギャップを解消するために、2015年ごろから工場休止などの措置をとる鉄鋼メーカーが相次ぎました。近年では、中国の鉄鋼の過剰生産と安値輸出によって、鉄鋼をめぐる米中の貿易摩擦が激しくなり、世界経済や鉄鋼需要への影響も懸念されています。 一方、新型コロナウイルス感染症の影響によって建設・製造業が低迷し、鉄鋼需要は減少したものの、2021年以降は需要の急回復を受けて、鉄鉱石などの原料価格が高騰している状況です。 鉄鋼業界は、世界経済の動きとそれに伴う海外需要に加え、海外から輸入する原料価格などに大きく影響を受けるため、世界情勢の動向と切り離せない業界と言えるでしょう。 ■鉄鋼業界の課題 鉄鋼業界が抱えている課題について解説します。 【カーボンニュートラル(脱炭素)における技術革新】 鉄はさまざまな産業に必要とされている一方、鉄鋼製品の生産は大量のCO2を排出します。そのため、経済成長と環境保全を両立するためには、鉄鋼業のカーボンニュートラル(脱炭素)目標の達成が不可欠とされています。 世界的に取り組みが進む中、すでに日本の鉄鋼業界は、世界最高水準のエネルギー効率を達成しています。世界鉄鋼協会の集計による「鉄鋼製品毎(ごと)の地域別CO2排出量比較」では、日本は大部分の製品で、世界平均や地域別平均よりも低いCO2排出量となっています。 省エネルギー設備の導入普及率はほぼ100%に達しており、排エネルギー(鉄鋼の製造を通じて生じるガスや熱など)の回収や有効活用も、世界でも特に高い状況です。 既存技術での省エネ・省CO2対策は徹底されているため、鉄鋼メーカー各社はさらなる対策に取り組み、製造過程で発生する二酸化炭素を分離して回収する水素還元技術の開発などが進められています。 今後も日本の鉄鋼業においては、温暖化対策のための革新的な技術開発が課題とされています。 ■海外競争力の強化 世界の鉄鋼需要は2050年に向けて、アジア諸国などの新興国を中心に引き続き増加する見込みです。また、中国の成長が頭打ちとなれば鉄の過剰供給に対応することが求められるため、今後は国際競争力をよりいっそう強化していくことが重要な課題となります。 これに対し、日本の鉄鋼メーカー各社は、効率化のための生産拠点集約や、M&Aによる設備の統合、国際的な提携・合併による海外での生産拠点設立などに取り組み、価格競争に対抗する手だてを取っています。 一方、日本の技術力の高さを生かして付加価値の高い製品にも取り組み、利益を上げる動きも活発になっています。 例えば、コンテナ船の大型化などにも対応する安全性・強度の高い「高アレスト鋼」や、自動車などに利用される高強度かつ加工性にも優れた「ハイテン鋼」、電気自動車のモーターなどに使われる「電磁鋼板」が挙げられます。