「子ども・子育て支援金」負担増で少子化対策にはむしろマイナス!?
男の立場で言うと、専業主婦が多かった私らの世代は明らかに「養う」責任というか義務感がありましたし、その世代に育てられた子ども世代にもそれが根強く残るとしたら、私も責任を感じます。 また、女性に関して言うと、例えば女性の育児休暇取得率は8割を超えているのに男性は1割ほどにとどまり、休業期間も女性は9割以上が半年以上なのに、男性は約半数が2週間未満です。家事や育児に費やす時間も、共働き家庭の女性が1日平均約7時間なのに対して、男性は1時間ですから、女性が「結婚は損」と考えても仕方ないと思います。 上野さんが言っているのは、つまりそういうことで、夫婦別姓制度すら今も認めず、性的マイノリティの差別を禁じる法案に反対して骨抜きにしたり、各地の裁判所で違憲や違憲状態という判決が出ている「同性婚」を「社会が変わってしまう」と認めなかったり――。いずれも今の若者世代の多くが「認めるべき」と考える社会の姿をかたくなに拒む結婚観やジェンダー観が、重く、どんよりと彼らにのしかかっていると、私も感じます。 ■国民負担なしでできる少子化対策だってある これは以前もお話ししましたが、G7(先進7か国)で一番出生率が高いフランスで、その回復に大きな役割を果たしたと言われるのが、未婚のカップルにも結婚と同等の権利を認める「パックス」という制度で、フランスでは出生数の実に6割が未婚のカップルから生まれています。同性婚でも養子縁組が認められ、子どもを持つことができます。 今言ったすべて、こうした制度改革には、基本的におカネはかかりません。国民負担なしにできるわけですから、少子化対策が喫緊の課題だと言うのなら考えるべきだと思いますが、面倒な話は先送り。裏金問題も真相解明にはほど遠く、内輪の処分でお茶を濁し、負担金の件も含めて、なんだかその場しのぎばかり。 私には今の日本、親が聞く耳を持たない家で、子どもが「ああはなりたくない」と絶望しているようにも映ります。責任の一端がある昭和世代として、少子化問題はこれからも考え続けたいと思います。
■◎潟永秀一郎(がたなが・しゅういちろう) 1961年生まれ。85年に毎日新聞入社。北九州や福岡など福岡県内での記者経験が長く、生活報道部(東京)、長崎支局長などを経てサンデー毎日編集長。取材は事件や災害から、暮らし、芸能など幅広く、テレビ出演多数。毎日新聞の公式キャラクター「なるほドリ」の命名者。
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