東京五輪へ向けてスタートを切るサッカーU-20森保ジャパンのイズムとは?
川崎フロンターレU‐18で「10番」を背負ったアタッカーの三笘は、今年9月からJFA・Jリーグ特別指定選手として川崎に登録された。天皇杯を戦う過程で非凡な才能を少しずつ開花させてきたホープは、4回戦で大宮アルディージャに屈した直後にはこんな言葉を残している。 「多くの方が見ている舞台で戦えたのは大きな経験になるけど、これを次に生かさないと意味がない。やるべきことが多くなったと思うし、これからどのように成長できるか、自分自身でも楽しみです」 五輪開催国としてアジア予選を免除されるからこそ、三笘のように、可能な限り多くの選手を見ていく作業が可能になる。つまりはアジア予選を度外視する形で、2020年の夏にいまから照準を合わせられる。森保監督は就任会見で、開催国のメリットについてもこう言及していた。 「予選という真剣勝負のなかで勝つことでチームが結束する、あるいは自信をもって選手やチームがステップアップしていくこともあると思いますが、予選がないということは全体的な底上げをしながら、じっくりとチーム作りができるメリットがあると思っています」 招集された23人のポジション別の内訳を見ると、GKが3、DFが5、MFが12、FWが3となっている。DFは清水エスパルスの立田悠悟(19)の189センチを筆頭に、最も身長の低い選手でジュビロ磐田の大南拓磨(19)の184センチというメンバー構成になっている。 おそらくはカバーリング能力に長けたMF登録の選手を中央に配置し、左右に空中戦にも対人にも強い長身選手を配置する3バックを思い描いているのだろう。
2012年から5年半率いた広島でも3バックで戦い、3度のJ1制覇を勝ち取った。森保監督は「監督経験のなかで3バックが多かったので、基本的にはそう考えています」と明言しながらも、こうつけ加えることも忘れなかった。 「選手たちが一番力を発揮できるような形を、柔軟に取っていきたい。それが4‐4‐2なのか、4‐2‐3‐1なのか、あるいは4‐1‐4‐1なのか。いろいろな形があると思いますけど、実際にピッチの上で選手を見ながら決めていきたい」 机上で思い描いたコンセプトはもちろん存在する。だからといって、最初から型に当てはめるような指導はしない。大切なのは実際に自分の目で見て、新たな発見があるかどうか。 開催国タイ、北朝鮮とグループリーグを戦い、15日には順位決定戦に臨む初陣への期待を問われた森保監督は、東京五輪の出場資格をもつすべての選手へ向けたメッセージを発している。 「大枠のコンセプトはミーティングを通じて伝えますが、それぞれの選手に特徴や個性があると思うので、まずは自分のよさを存分に発揮してほしい。このチームに残っていきたい、このチームでやり続けたいという意思を見せられるように、思い切ってプレーしてほしい」 初陣へ臨む選手の顔ぶれから伝わってきたのは(1)当面は選手選考の門戸を大きく広げる(2)基本は3バックとするも柔軟に対応する(3)まずは組織よりも個性を発揮してほしい――の3ヶ条からなる、東京五輪へ向けた「森保イズム」となる。 来年1月9日から中国で開催されるアジアサッカー連盟主催の公式戦、AFC U‐23選手権2018には同じイズムのもと、メンバーをがらりと変えて臨む青写真がすでに描かれている。 (文責・藤江直人/スポーツライター)