山口県縦断の美祢線、全線運休1年…JR西日本「単独での復旧とその後の運行は難しい」
山口県内を南北に走るJR美祢(みね)線が、昨年6月30日から7月1日にかけての大雨で被災し、全線運休となって1年になる。地元は復旧を求めているが、運営するJR西日本(本社・大阪市)は今年5月、「単独での復旧とその後の運行は難しい」と主張し、代替案を協議する検討部会を設置するよう沿線自治体などに要請した。地元では反発や戸惑いが広がっており、先行きは不透明になっている。(本岡辰章、池田寛樹) 【写真】消えゆく北の鉄路を求めひとり旅
土台ないまま
今月21日、美祢市を訪れると、土台が流された状態の美祢線の線路は、1年前とほとんど同じ姿のままだった。近くを流れる厚狭川には橋脚の残骸があり、線路は撤去されていた。
「姿が変わった線路を見ていると悲しい。早く復旧してほしい」。移動を美祢線に頼っていたという厚保(あつ)駅(美祢市)の近くに住む女性(85)はため息をついた。現在は代行バスが運行されている。
5月の総会では事務局が、通学定期券の購入費助成や観光客向けの快速列車の運行、居住誘導施策などの利用促進策と、それらを実行した際の効果の試算を報告。最大で輸送密度(1キロ当たりの1日の平均利用者数)が2019年度の「478人」の2・7倍となる「1292人」に増えるとした。
国土交通省がローカル線の存廃検討の目安とする「1000人未満」は上回る試算だったが、JR西の広岡研二・広島支社長は総会で、「大量輸送という鉄道の強みを生かせるレベルに達していない」と指摘。さらに、高額とする復旧費や利用者低迷を理由に「(JR単独での)復旧とその後の運行は難しい」とし、協議会に新たな検討部会を設置するよう要請した。
同社によると、美祢線の収支(19~21年度平均)は、全区間で年間4億6000万円の赤字となっている。
広岡支社長の発言について、村岡嗣政・山口県知事は今月の記者会見で「事業者の責任でまずしっかり復旧してほしい」と強調した。