万博では飛ばない…!大阪万博の目玉「空飛ぶクルマ事業」に参画する老舗タクシー会社が明かした「現状と未来」
技術的には実現可能なところまできている
開幕まで1年を切った大阪・関西万博において、目玉の一つとされているのが「空飛ぶクルマ」だ。高度な技術力の結晶であり、一般客にサービスとして提供できるようになれば100年に一度の交通改革となる、とさえ言われている。万博でお披露目となればそのインパクトは強烈なものになるだろう。しかし一方で、実現に向けては厳しい声が飛び交っている現実もある。 【マンガ】「長者番付1位」になった「会社員」の「スゴすぎる投資術」の全容 大阪の老舗タクシー会社である「大宝タクシー」は、タクシー会社として「空飛ぶクルマ」事業に唯一参画している企業だ。'22年に「そらとぶタクシー株式会社」を設立し、1台約7億円の機体を50台分購入する契約を結ぶなど、準備を進めてきた。 同社の舵取りを行うのは、双子の寳上(ほうじょう)卓音さんと寳上和音さん。現在30歳の若手経営者である二人は、万博での実現を目指す「空飛ぶクルマ」の現状についてこう明かす。 「すでに国内で高度50m以上の有人飛行にも成功しており、技術的にはサービスが提供可能なところまできています。しかし、どの事業者さんと話しても、『万博では飛べない』というのが共通認識です。 許認可の問題が重くのしかかっているうえ、運営側は何もかも対応が遅すぎる。事業者側は準備を進めていますが、正直現状では何もできない。万博までにはとても無理で、早くて'25年後半、'26年中には『空飛ぶクルマ』がサービスとして提供されることを想定しています」(卓音さん)
大手企業も次々と参入
万博の来場者数は約2820万人にのぼると想定されている。そこでサービスが提供できないとなると、同社としての損害は大きくなるはずだ。しかし、卓音さんは「万博で実現しなくても、eVTOL(空飛ぶクルマ)事業が日本のプライベートジェット市場を活性化させることは間違いない」と力を込める。 将来的に「空飛ぶクルマ」はどのようなサービスになるのか。和音さんが続ける。 「空飛ぶクルマとはつまり、AIで操縦が可能な乗客を乗せて移動する小さな飛行機です。垂直に飛べる飛行機、という表現が一番しっくりきますね。すでに有人飛行にも成功しており、丸紅さんやJALさんなど大手企業も参入していますが、飛行場を作ったりという動きはまだない。我々はすでに土地取得や飛行所の手配にも動いており、先進的に動いている1社だという自負があります」 価格はメーカーによりバラつきがあるが、1台5億~11億円ほど。保険料だけでも年間で1300万円程度するという。しかし寳上兄弟は、それに見合うリターンもあると力説する。同社の換算では年間でフル稼働させた場合、1台あたり4.4億円の売上げを見込んでいる。 「粗利としては決して悪くない。5年くらいで減価償却ができる計算ですね」(和音さん)