エネルギー・原発政策をめぐって亀裂を深める新聞~「読売、産経、日経新聞」対「朝日、毎日、東京新聞」
「二極化する報道」とは
山口俊一科学技術担当相は9月22日、ウィーンではじまった国際原子力機関(IAEA)の年次総会で演説、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県)の再稼動を政府として進めていくと表明した。これは国際会議の場での発言で、世界に向かって大々的に日本の原発再稼動を喧伝したことになる。このことについて、朝日や読売新聞が9月23日朝刊で伝えている。 東京を拠点に新聞を発行する在京6紙は、政府のエネルギー・原発政策に対し、どのような立ち位置で報道しているのだろうか。安倍晋三政権が中長期的な原発・エネルギー政策の指針となるエネルギー基本計画の政府案を発表したときの各紙の社説を読み比べてみると、くっきりと論調の違いがわかる。 民主党政権時代の脱原発政策を変更し、原発推進政策に回帰させた政府案に賛成したのが「読売、産経、日経新聞」グループ(いずれも本社が大手町にあるため業界では「大手町グループ」ともいわれる)で、反対したのが「朝日、毎日、東京新聞」グループになる。 たとえば、読売は「『原発活用』への妥当な転換だ」(2月26日朝刊)と見出しをとって政府案に賛同し、朝日は「これが『計画』なのか」(2月27日朝刊)と疑問を呈した。他の4紙も賛否をはっきりとさせた見出しにしており、立場がよくわかるものだった。 このように現在の新聞を中心としたメディア状況は、保守系メディア(大手町グループ)とリベラル系メディアに二極化し、双方が自らの主張を強く押しだし、角を突き合わせている。これはエネルギー・原発政策にだけみられるのではなく、集団的自衛権の行使容認をはじめとする安全保障政策をめぐっても同様の現象がみられ、亀裂を深めている。 多様な意見があることはいいことで、それを否定しているのではない。国の根幹をなすエネルギーや安保政策のありようについて、双方が聞く耳をもたず互いの意見をいいっ放しにし、まともな議論ができていないように思える。これが「二極化する報道」の最大の問題点であろう。