エネルギー・原発政策をめぐって亀裂を深める新聞~「読売、産経、日経新聞」対「朝日、毎日、東京新聞」
原発運転差し止めに読売と産経が反発
エネルギー基本計画の閣議決定後の5月、原発稼働をめぐる画期的な判決があった。住民らが関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転の差し止めを求めた裁判が福井地裁であり、樋口英明裁判長が5月21日、再稼動は危険だとして住民側の主張を認めた。国策として進めてきた原発の運転を差し止める判決は極めて稀なことである。 判決は東京電力福島第一原発事故を重くみて安全対策が十分でないとしたうえで、住民の人格権が侵害される危険があるとした。「人格権の侵害」とはどういうことなのだろうか。 判決文は「運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失である」とし、憲法13条の人格権にもとづき「国民の命と暮らしを守る」という観点を重くみた。コスト論よりも人格権を重視した、なかなか粋な判決といえる。 日経新聞をのぞく在京各紙は5月22日朝刊の1面トップにし、複数の面を使って大展開した。 原発推進派の読売と産経新聞はこの判決に強く反発。読売は「不合理な推論が導く否定的な判決」と題する社説を載せ、「原発の新たな規制基準を無視し、科学的知見にも乏しい」と激しく反論した。産経は1面に「拙速 脱原発ありき」とする解説記事を掲載し、判決内容を指弾した。 脱原発派の朝日と毎日、東京新聞はそれぞれ社説を掲げ、判決を高く評価した。毎日は「なし崩し再稼動に警告」と題し、「再稼動に前のめりな安倍政権の方針への重い警告である」とした。日経は原発賛成派ではあるが、ここでは中立的なトーンの記事にしていた。 このように原発稼働をめぐる判決においても「二極化する報道」の姿がくっきりと浮かびあがってくる。(2014年9月23日) ---------- 徳山喜雄(とくやま・よしお) 全国紙記者。近著に『安倍官邸と報道―「二極化する報道」の危機』(集英社新書)。