【阪神】青柳晃洋のポスティング移籍容認 「基準」として残りかねない藤浪晋太郎との〝近似値〟
阪神は青柳晃洋投手(30)が今オフにポスティングシステムを利用してのメジャーリーグ挑戦を希望したことを受け、5日に容認する姿勢を表明。2022年に最多勝、最優秀防御率、最高勝率の投手3冠に輝いた虎のサイドスロー右腕は夢を追い、海を渡ることが決定的となった。NPB労使でも日米球団間の移籍ルールは何かと争点になりやすいものの、フロント側が今回と「2年前」に下した2つの判断はチーム内における一定の〝基準線〟として定着する可能性もある――。 この日、兵庫・西宮市内の鳴尾浜球場で報道陣の取材に応対した青柳は「自分のわがまま、気持ちを後押ししてくれた球団には感謝しかない」とチームへの感謝の思いをまず口にした。 21年に東京五輪に出場し、米球界移籍への意欲が強まったという。「自分はまだ国内FA権すら取れていない。海外FA権となると35歳くらいになるので『自分が元気なうちに、挑戦できるうちに挑戦させてほしい』と球団に伝え、ポスティングという形になった」とも語った。 粟井球団社長は青柳のポスティング移籍を容認した背景について「ケース・バイ・ケースで対応するというのがチームの方針。基本的には認めていないのですが」と前置きした上で「ずっとウチのためにやってきてくれたので。長い時間、話をしてきたこと」と説明。右腕の熱意に加え、これまでのチームへの貢献度も考慮したことを示唆した。今後、球団は申請手続きに着手する。 阪神から米球界へ同制度を利用して移籍するとなれば、22年オフの藤浪晋太郎投手(30=メッツ傘下3AシラキュースからFA)以来、2年ぶり。当時28歳だった藤浪も国内FA権すら取得できていない状況だったが、本人の「30歳になる前に海外に挑戦してみたい」という強い意向を受け入れ、球団サイドもポスティング移籍を容認した。 近年のNPBの労使間交渉で常に争点となってきたのが、海外FA権取得までの年数の長さだ。入団1年目から一軍でプレーできたとしても9シーズンもの期間が必要とあり、大卒、社会人出身選手はその時点で既に30歳をオーバー。選手として最も脂が乗り切った時期を逃してしまうことが多い。 ポスティングシステムはそのための〝救済措置〟として機能している側面も強いが、あくまでも同制度適用を容認するかは所属球団側が権利を握る。譲渡金の上限に制限がかかる中、球団サイドとしてはメリットが薄いケースも多く、メジャー指向の選手が年々増える中、十分に機能しているとは言い難い。選手会もFA期間の短縮をNPBサイドに再三要求しているが、両者の隔たりはいまだ大きい。 藤浪は阪神に10年間在籍。浮き沈みの激しいタテジマ生活ではあったが、154試合に先発登板し57勝54敗という成績をマークした。今季が入団8年目となる青柳は141試合に先発登板し59勝44敗。高卒入団(藤浪)、大卒入団(青柳)の違いこそあれ、くしくも両者は大変近しい数字をチーム内で残している。阪神からすれば、これらの「藤浪&青柳基準」が、ポスティング容認のためにクリアすべき一定のラインであると選手サイドに認識される可能性も否めない。 佐藤輝、森下など入団当初から米球界への憧れを公言する選手は阪神にも多く存在する。日米球界間の移籍をめぐるルールが時代に追いつかない中、阪神フロントは今オフ、思い切った決断を下した形となった。
東スポWEB